2021年3月9日〜12日、愛知県名古屋市・Aichi Sky Expo(愛知県国際展示場)にて、アジア最大級の物流の見本市「国際総合物流展2021 in 愛知」が開催されました。
本記事では、出展することで実際に感じた来場者のニーズや物流業界のトレンドなどを振り返り、記事にまとめました。お時間がなく全てを見ることができなかった方、展示会に来ることができなかった方へも参考の1つとなれば幸いです。
目次: 1. 初の開催地:愛知県は、物流や先進工業集う最適な地域 2. AGV・AMRを中心に日々進化する最新機器 3. 今回の来場者は果たして、なにを求めているのか? 4. コロナ禍での展示会のトレンドは? |
- 国際総合物流展の概要 -
テーマ:「ロジスティクスのRe Design」
目的:内外の最新物流機器・システム・情報等のソフトとハードを一堂に結集し、交易振興・技術の向上・情報の提供・人的交流等を促進すること。
引用元:国際総合物流展-開催概要
オリンピックやコロナの影響で異例の愛知開催に
今回で14回目を迎える「国際総合物流展」は、経済活動のインフラとして不可欠な物流・ロジスティクスの先進情報が収集できる日本唯一・アジア最大級の専門展示会です。1994年の初回以降、隔年で開催しています。
コロナ以前は物流業界の人手不足が大きな課題であり、多くの人が来場していました。しかし、今回はコロナ禍での開催ということで出展を辞退する企業もあり、出展各社の人員配置・展示物は限定的のようでした。
足元では、コロナの影響による他業界からの人材流入によって、物流現場の人手不足は一時的に解消されているようですが、ポスト・コロナでの人材再流出への懸念がある中、サステナブルな倉庫運営を行うための省人化・自動化のニーズは依然高く、環境変化が著しい現代において大型投資が難しいことから、融通性の利くロボット・ソリューションが注目されていることが本展示会でも感じられました。
総展示数は中部・関西エリアの企業を中心に計245社・団体/775ブースでした。また、「国際物流総合展2018」の実績によれば、来場者の業種別では「製造業」が39.0%で最多となっています。
展示自体は、ブース全体に縦横無尽にレールを走らせるなどの大規模なマテハン機器よりも、AGVやAMRなどの小規模で導入できるロボット類が目立ちました。
これはコロナ禍の影響もあると思いますが、ここ数年見られる大きなトレンドでもあります。近年、伸長著しいECコマースへの対応で多品種・小ロットの業務が増え、導入に大きなコストのかかる大規模なマテハン機器よりも初期投資が少なくて済む、AGVやAMRなどに関心が寄せられていることが推測されます。
AGVとAMRの両者は、今回の展示でも主流となっています。
AGV(Automated Guided Vehicle=無人搬送車)は、電流や磁気、レーザーなどの誘導方式に沿って、人間が運転操作を行わなくとも自動で走行できることが大きな特徴です。決まったラインを行き来することがメインの物量業務に向いた機器です。
現在は単に軌道を行き来するだけでなく、プラスαのアクションを持たせたものが主流となっていて、各企業がそれぞれの個性を発揮し導入企業のニーズに応えています。
また、AMR(Autonomous Mobile Robot=自律走行ロボット)は、軌道に沿って走行するAGVとは異なり、ロボット自身が目的地まで自律移動することが特徴となります。既存の設備やレイアウト、オペレーションを大きく変更することなく運用できることが強みです。小規模から導入できることもメリットですが、AGVと比べ初期導入コストが大きくなりがちです。
現在は用途や状況に応じてAGVとAMRを棲み分けたり、また基本は自律走行しながら特定の地点でマーカーにより自己位置を補正するロボットなど、AGVとAMRの中間的な機器も登場しています。今後は導入のコスト効果(ROI)も踏まえ、より適材適所に複数のロボットを使っていく事が求められる時代になります。
当社の次世代型ロボットソーター「t-Sort」のデモにも、お客様より大きな関心を寄せていただきました。今回、小型AGVはt-Sort以外は出展されていなかったこともあり、サイズへのコメントが多かった印象です。
「この小型AGVはコンベアの代替商材だ」
「これってデモ機だよね?」
「これはサイズダウンしたデモ機であって、実機はもっと大きいんでしょ?」 などなど。
実機とわかるとそのコンパクトさに驚かれていました。小型のAGVが機敏に走り回る姿は、世の中にとってまだまだ新鮮味があるようです。
また、今回立地上の特性もあり、製造系の工場関係者様が多数来場されていました。
工場生産ラインにはそもそも仕分けという工程が発生しないことから、製造系の工場関係者の方々は生産ラインへの部材供給ラインへのAGV転用を検討されていました。製造/物流といった垣根を超えて、様々な用途へ転用していく事が今後のロボット活用のヒントになるような気がします。
一般に物流拠点における設備や機器は、その多くが"レンタル"や"リース"で導入されていますが、当社はサブスクリプションサービスでRaaS+というサービスをご提案しており、今回はそちらにも大きなご注目をいただきました。
「ロボットを活用したオペレーション設計から導入まで数ヵ月かかるんじゃないの?」
「導入費用高いんじゃないの?」
といったコスト・リードタイムに関する質問を多くのお客様から頂きました。
最短1ヶ月の短リードタイムで導入、導入支援からシステムインテグレーション、維持管理まで、すべてをワンストップでご提供し、初期費用ゼロ・月額使用料のみのシンプルな料金体系、といった当社サービスの特徴については、関心を持って頂けたお客様が多かったと思います。
物流自動化設備をサブスクで利用できる事自体にご興味を持って頂けた事は新しい発見でした。
今回の来場者の属性は、主に総務・人事・購買部門等、本社勤務のご担当者でした。その目的は主に、物流機器やシステムに関する情報収集ですが、潜在的には物流の効率化・自動化への使命感や、現状に対する危機意識が存在するように感じます。
これらの背景としては、近年の物流業界における人件費の高騰・人材不足・高齢化や、多品種・小ロットのECコマースの拡大で作業が複雑化し、より厳密な正確性を求められるようになったことが挙げられるでしょう。
物流の現場の要望を受け、これらの課題を乗り越えるために、真剣な目で展示に向きあう姿があちこちで見られたことが、とても印象的でした。
ECコマースが活況を呈する状況は、物流業界にとっては追い風となります。ただし、物流の現場で求められている様々な課題に対しては、認識はできているものの完璧には応えられていないのが現状です。
今回の「国際総合物流展」に関しても、物流企業が求めている多種多様なニーズに出展社側のソリューションが100%応えきれているかというと、我々含めてそこまでは至っていないように感じました。ただし、この点に関しては日進月歩で技術が進化しており、もう一歩のところまで来ているような気もします・・・。次回以降の開催に、大いに期待したいところです。
初の愛知、しかもコロナ禍の中で1年延期されての開催となった、異例づくめの今回の「国際総合物流展」。出展企業もブースを簡素化し、コンパクトかつディスタンスを心がけるなど、これまでとは大きく異なる会場風景となりました。
ただ、それぞれのブースから発せられる熱量は大きく、各社の並々ならぬ意欲を感じました。今後、世の中が平常にも戻っていくにつれて、「国際総合物流展」もまた、これまでのような華やかさを取り戻すのではないでしょうか。
また今回の展示会と並行して3月9日〜5月31日の期間、オンラインで「バーチャル物流展」も開催されています。距離や時間に捉われない出展者との交流の場を提供するもので、今後のコロナ後の世界につながる新たな試みとして注目されます。
画像:プラスオートメーションの展示ブースとメンバー / セミナーの様子
ここまでお読みいただきありがとうございます。
+A mediaでは今後も引き続き、関連展示会のリサーチとレポートを通じて、皆さまに最新のトレンドや情報をお伝えしてまいります。
また、2021.5月現在、当社が運営するR&D/デモスペース「cube」でのロボットデモ体験も多くのお客様に見学いただいております。
cubeを見学してみたい、まずは電話やオンラインで話を少しだけ聞いてみたい等、ご不明な点がございましたら、下記のご相談フォームよりお気軽にお問い合わせください。