2021年6月24日、730名を超える参加申込のあったロジスティクスAMRフォーラム2021に参加し、視聴者視点からRaaSにフォーカスを当てレポートしていきます。
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開催概要:
第6回 ロジザード物流セミナー coordination with LOGISTICS TODAY ロジスティクスAMRフォーラム2021 ~徹底検証|AMR導入で物流効率は本当に向上するのか~
主催 ロジザード株式会社 / 共催 LOGISTICS TODAY
登壇者(講演順)
LOGISTICS TODAY 編集長 赤澤 裕介氏
ロジザード株式会社 代表取締役社長 金澤 茂則氏
ラピュタロボティクス株式会社執行役員 森 亮氏
プラスオートメーション株式会社CMO 大西 弘基氏
関連記事: 主催者・共催者のレポートコラムも出ております。是非こちらの記事もご覧ください。 ▼ロジスティクスAMRフォーラム2021 座談会:物流ロボットに精通する3社に聞く『物流のミライ』(ロジザード社コラム) ▼ロジスティクスAMRフォーラム2021特集(LOGISTICS TODAY社ページ) |
現在、物流倉庫を管理している人たちが頭を悩ましていることに、人件費の上昇が挙げられます。日本における人口の減少、さらに就業人口の減少は、避けられない問題です。この課題を解決する手段の1つが「自動化」です。
ロボティクス(ロボットと、それを運用するためのシステム)を導入することで自動化を実現し、従業員一人あたりの生産性を上げること。ひいては雇用人数を最低限に抑えることが、喫緊の課題だと言えるでしょう。
雇用に関する悩みが軽減できるなら、「ロボットを導入したい」と思うのは当然の流れです。ただし、ロボット導入による自動化には、いくつかの超えなくてはいけないハードルがあります。
自社倉庫でロボットを導入すると、本当に効果が上がるのか? 倉庫の作業工程の、どの部分を人からロボットに代替して、自動化するのか? どのメーカーの、どのロボットを導入すべきか? 導入した際に、どう運用やメンテナンスするか? ロボットを購入すべきか、それともリースやレンタルにすべきか……もしくは他の選択肢があるのか?
多くの倉庫事業者が、こうした様々なハードルを前にして、逡巡してしまいます。
まず「ピッキング」や「仕分け」において、ロボット導入による自動化を検討すべきかどうか、その目安となる基準をいくつかご紹介します。
汎用的なロボットの運用条件として、倉庫内の通路の幅が0.9m以上か、取り扱い製品が靴箱より小さいサイズであるかがあります。そのうえで、倉庫の広さと作業人数をチェックしましょう。
倉庫の規模に関しての目安は、倉庫の広さが1,000平米以上であり、ピッキング作業者の人数が10人以上であることが基準となります。これらを満たしていれば、ロボット導入による効果が十分に見込めます。
前提条件
・倉庫内の通路が0.9m以上
・取り扱い製品サイズが7,000cm3以下
・倉庫の広さが1,000平米以上
・ピッキング作業者の人数が10人以上
「自社倉庫は規模が小さいから、ロボット導入などは大げさすぎる」と思われていた事業者も多いかもしれません。でも、実際には意外と多くの倉庫が、ロボット導入による自動化のメリットを享受できるということです。
物流ロボット開発メーカー「ラピュタロボティクス」がまとめたデータによると、こうした倉庫では、ピッキング作業者の、作業時間に占める歩行時間が4割前後に達することがあります。一般的に、ピッキング作業者が歩行している時間が長ければ長いほど生産性を低下させていることになります。歩いている時間は、なにも生み出していないのです。
このピッキング作業者をサポートすることで、その歩行時間を下げられるのが、AMRなどの物流ロボットです。ピッキング作業者の歩行時間を下げられれば、ピッキング作業者の労働時間や確保すべき雇用人数が抑えられます。
前項の基準を満たし、ロボット導入を積極的に検討開始したときに悩ましいのが、ロボットを購入すべきか、それともリースやレンタルにするかです。
初期に導入したロボットとシステムを数年以上の長期間に渡って使うのであれば、経済的に最も合理的な選択肢は「購入」することになります。ただし、購入する場合には、初期コストがかかる点と、導入機器が陳腐化する可能性があります(物流ロボットは年々進化していきます)。
初期コストを考慮した場合には、リースやレンタルという方法もあります。経済合理性を考えた場合に、3〜5年の導入にはリースが候補に上がります。これは導入時に機器が新品であることが多く、分割購入に近いと考えられます。機器は、カスタマイズすることも可能です。
購入やリースの場合は、同じ機器を使い続ける場合に、経済的なメリットが大きいです。ただし、購入またはリース契約をした後に、思ったよりも導入効果が少なかったとしても、機器やシステムの切り替えが難しいのが実情です。
一方のレンタルに関しては、導入時の機器は新品または中古となります。1日〜5年と、契約期間は短期から長期まで対応します。機器は汎用性の高いものを借りることになります。
そして、購入でもリースでもレンタルでもない、初期コストを抑えながらロボットによる自動化を実現できる方法が「RaaS(ラース)」です。RaaSとは、「Robotics as a Service(ロボティクス アズ ア サービス)」の略で、ロボットと、それを動かすためのシステム(ソフトウェア)を、月額定額制で提供するものです。
月額料金には、導入前はもちろん導入後のコンサルティングや、ロボットと運用システムのレンタル料、そしてロボットやソフトウェアの維持管理とアップデート、さらに契約満了時の撤去費用をすべて含みます。
RaaSを提供するプラスオートメーションを例に、さらに具体的に何が実現できるかを見ていきます。
現在、同社が主に提供しているのは、倉庫の中で最も人手のかかる「ピッキング」と「仕分け」の工程で活躍するロボティクス(ロボットとシステム)です。倉庫内にある棚などの既存設備を、できるだけ活用しつつ、ロボティクス導入による効果を最大化します。
一般的な自動化設備の導入では、「導入の意思決定」や「検討」までに力点がおかれていることが多いです。ピッキングと仕分けに関わるロボットは、メーカーやモデルも様々です。
ただし、同社がコンサルティングすることで、こうした「導入前」のコスト=苦労が軽減されます。そしてRaaSにおいては、「導入」することがゴールではなく、「導入」がスタートになります。
導入後は、実際に運用するなかで、導入効果を検証し、さらなる効率化と生産性の向上を目指して導入システムを改善していきます。
改善のなかで必要になる倉庫内のレイアウト変更、システムやソフトウェアの最適化、ロボットのメンテナンス費用などは、月額料金に含まれます。つまり契約事業者は、ロボットやシステムのレンタル料を支払うのではなく、ロボットやシステムの導入による成果に対して、報酬を支払うイメージとなります。
RaaSでは、契約は数カ月単位での更新となります。そのため契約期間中に想定していた生産性向上が達成できなければ、契約を解除すればよいだけです。これも契約期間が設定されているリースやレンタルと、RaaSとの大きな違いです。
倉庫の自動化におけるハードル、不安や疑問点を、冒頭でいくつか挙げました。
「自社倉庫でロボットを導入すると効果が上がるのか? 倉庫の作業工程の、どの部分を人からロボットに代替して、自動化するのか? どんなロボットを導入すべきか? 導入した際に、どう運用するか? ロボットを購入すべきか、それともリースやレンタルにすべきか……もしくは他の選択肢があるのか?」
これらの不安や疑問点が少ない、または皆無の事業者であれば、自動化においては、ロボティクスの購入やリース、またはレンタルが向いている可能性が高いです。
逆に不安や疑問点が多い場合には、RaaS(ラース)の利用が適している可能性が高まります。RaaSは、事業者の導入前の不安を解消し、ロボティクス導入のリスク……せっかく導入したのにレンタル料金だけが負担になるのではないかというリスクや不安を下げるメリットがあるサービスだからです。
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今回は、RaaSに焦点を当ててのレポートでしたが、冒頭でもご紹介した登壇者の4名の座談会やフォーラム全体レポートも是非ご一読ください。
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