物流管理指標(物流KPI)とは、物流管理が適切であるかどうかを判断することの指標です。
KPIというのは「Key Performance Indicator(s)」の略称で、日本語では「重要業績評価指標」と訳されます。企業が目標の達成度合いを測る上で参考となる定量的な指標のことや、それらの指標を用いた管理手法を指して使う言葉であり、KPI自体は物流業に特化したものではありません。本メディアでは物流業のKPI、それも特に定量化が難しい倉庫内作業に関するKPIに焦点を当ててみたいと思います。
物流KPIには、次のように3つの分類があります。3つの分類から自社にあった指標をチェックし、分析と改善を繰り返すことで業務を効率化していくのが基本的な流れです。
「物流コスト÷出荷数量」で計算される「数量あたり物流コスト」や、「処理ケース数÷投入人時」で計算される「人時生産性」のように、コストや生産性を測る指標です。ほかにも、「保管間口数÷総間口数」で計算される「保管効率」のような倉庫に関する指標もあります。
「誤出荷発生件数÷出荷指示数」で計算される「誤出荷率」や、「クレーム発生件数÷出荷指示数」で計算される「クレーム発生率」、「納期遅延発生件数÷出荷指示数」で計算される「納期差異」のように、品質やサービスレベルを測る指標です。
配送先別の配送頻度や、配送先での付帯作業の有無など、適正な条件で業務が行われているかを測る指標です。条件を見直すことでムダを作業をなくしたり、余計なコストを削減したりします。
上記はあくまでも参考であり、実際は物流倉庫ごとにさまざまな指標を用いて業務の効率化に取り組んでいます。物流KPIの詳細や導入メリットについては、別の記事でも詳しく解説しているので、併せてご覧ください。
物流管理指標(物流KPI)を導入して業務の効率化を進める前に、まず取り組んでいただきたいことがあります。それは、物流倉庫内での安全対策です。
業務の効率化は重要ですが、効率を重視すると安全への配慮がおろそかになりがちです。その結果、作業者が危険な目にあうようなことは避けなければなりません。近年ではロボットなどの自動化設備を導入する物流倉庫が増加しているものの、まだまだ多くの作業が人の手で行われています。まずは安全対策に取り組み、作業者が安心して作業できる環境を構築しましょう。業務の効率化に取り組むのは、そのあとになります。
物流倉庫には多くの危険が潜んでいるため、事故が発生する可能性が常にあることを改めて認識しましょう。実際に多くの作業者が、作業中にヒヤッとした経験が一度はあると思います。ここでは、物流倉庫で起こりやすい事故がどのようなものかを紹介します。
物流倉庫内ではさまざまなマテハン機器が稼働していますが、それらによる事故が数多く発生しています。代表的なものが、フォークリフトでの転倒や他の作業者との接触です。マテハン機器を正しく扱えていないことや、作業者の注意不足が原因の一つとして考えられます。
ラックから荷物が落下したり、フォークリフトでの運搬中に荷物が崩れたりしてケガをする事故が発生しています。特に、落下した荷物が重量物や危険物であれば重大な事故につながる可能性があります。
では、上述したような事故はどうすれば防げるのでしょうか。物流倉庫で行うべき安全対策をいくつか紹介します。
作業者一人ひとりが安全に配慮して作業することで、物流倉庫での事故をかなりの割合で削減できます。正しい作業手順や服装、指差し確認、他の作業者との声掛けなど、安全に作業をするために必要なことを定期的な教育で身につけるようにしましょう。
< 整理整頓 >
整理整頓をして物流倉庫内に不要なものを置かないことで、転落や転倒が発生しにくくなります。ラックに保管する荷物の中身や量を適正に管理しておけば、荷物が落下する危険性も低くなるでしょう。
フォークリフトやラックといった各種マテハン機器は、日々の点検が重要です。作業中に故障が発生すると事故に発展する危険性が高まるので、決められた手順で定期的に点検する仕組みをつくりましょう。
事故をなくす方法として、自動化してしまうというのも有効な手段です。AGV(無人搬送車)による運搬の自動化や自動倉庫による入出庫作業の自動化など、マテハン機器を導入することで作業者が危険な作業をしなくてもよくなります。
作業者が安心して作業できる環境を構築できたら、次に物流品質の向上に取り組んでいきます。誤出荷のような不具合が頻繁に起こっているとクレームや信用に関わりますし、緊急対応によって業務の効率も下がります。
業務の効率化に取り組む前に、正しい作業によって不具合が起こらない現場に変えていきましょう。それでは、このような物流倉庫の人手不足を改善するためには、どんな方法があるでしょうか。
ここでは、物流倉庫で起こりやすい品質問題を紹介します。これらの問題は物流管理指標(物流KPI)の中の「品質・サービスレベル」とも密接に関わっています。
保管環境が悪かったり、作業中に落下したりすると荷物が破損する危険性があります。また、食品のように賞味期限がある商品の場合、先入れ先出しが徹底できていなければ賞味期限切れが発生し、廃棄処分になる恐れがあります。
< 棚卸差異 >
棚卸を行った結果、理論在庫と実在庫が一致しないことがありますが、これも品質問題の一種です。入力ミスや誤出荷、紛失、盗難などの原因で在庫数がズレてしまった可能性があるため、原因を追求して再発を防止しなければなりません。
配送先違い、商品違い、数量違い、書類の不備といった誤出荷は、取引先からのクレームや信用の低下に直接影響する問題です。また、誤出荷は上述した棚卸差異が発生する原因にもなります。
業務の内容を明確にし、正確かつ効率的に行う手順を示したマニュアルを整備することは、物流品質を向上させるために重要です。通常の手順だけでなく、イレギュラーが発生した場合の手順についてもまとめておくと、不具合が起こりにくくなるでしょう。ただし、マニュアルを整備しただけで終わらず、作業者全員に浸透するまで教育を行わなくてはなりません。
どれだけ注意をしていても、人が作業をしているとミスが発生してしまうものです。WMS(倉庫管理システム)のように物流倉庫の管理に特化したシステムを導入し、システムでチェックすることでミスをなくすのも効果的です。システムの導入は業務の効率化にもつながります。
安全対策と物流品質の向上に取り組むことで、ようやく業務の効率化をするための基盤が整います。ここから、業務の効率化を行っていきましょう。
業務の効率化といってもさまざまな切り口があるので、何から始めればいいのか分からないという方も多いかもしれません。そんな時におすすめなのが、現状の業務を分析することです。
といった情報を知ることが、業務の効率化を進める上では重要になります。そもそも、どこに課題があり、どのように改善すべきなのかが分からなければ、適切な物流管理指標(物流KPI)を設定することは困難です。また、現状の数値を知らなければ目標値も設定できないので、物流KPIが形だけのものになってしまいます。まずは現状の業務を分析し、その上で物流KPIを導入しましょう。
物流倉庫内での業務を分析する場合、一般的にはピッキング・梱包・仕分けの3つの業務に注目して各業務の範囲を定め、1人1時間あたりの出来高がどうなっているかをみていきます。
ここで重要なのが、各業務をそれらを構成する要素作業の単位まで細分化して考えることです。例えば、物流倉庫内の業務で多くの人員が投入されているのはピッキングですが、次のように細分化できます。
上記はあくまでも一例であり、実際にどのレベルまで細分化するかや、どこまでをピッキングの範囲にするかは物流倉庫によって異なります。しかし、このように細分化して考えることで、「この作業は省略できる」「この作業はロボットで自動化できる」といった改善点が見えてくるでしょう。要素作業ごとに時間を計測しておけば、業務全体に占める割合が分かるので改善の優先度も付けやすくなります。
ピッキングと同様に、梱包や仕分けも要素作業の単位に細分化して考えることができます。
このような分析方法は「ワークサンプリング分析」と呼ばれており、業務の効率化を進める際に役立ちます。ぜひ取り入れてみてください。
ここまでで、物流管理指標(物流KPI)を導入する前に取り組んでおきたいことを3つのステップに分けて紹介してきました。最後にもう一度まとめておきます。
3つのステップを経ることで、物流KPIを導入して業務の効率化に取り組む基盤が整います。この記事を参考にしつつ、物流KPIの導入を目指していただければ幸いです。
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