後編となる本稿では、+Automationの出展レポートをお届けしつつ、物流ロボット普及に向けたヒントについて考察する。
デモンストレーションを広く用意した+Automationブース
+Automationでは、同社が販売代理店を務める「SEER」(シアー)の自動フォークリフト、AMRと、AGV「t-Sort」(Zhejiang Libiao Robot)が展示された。
SEERの自動フォークリフト「SFL-CDD14」とAMR「AMB-150J」が同じロケーション下で、衝突することもなく共存し稼働している様子に、多くの来展者が足を止め、そして動画で撮影しているのが印象的であった。
自動フォークリフトは、人の仕事をロボットに代替できるという点で、導入効果がとても分かりやすい。筆者の知る物流従事者にも、自動フォークリフトに高い興味を示している方が少なくない。さらに、AMRと同じロケーションで使えるとなれば、使い勝手も格段に向上するはずだ。AGV「t-Sort」のアドバンテージは、「二つのスピード感」だと私は感じた。
一つ目のスピード感は、「t-Sort」の搬送スピードである。
国際ロボット展では多数の搬送ロボットが展示されていたが、これほど移動速度の速いAGV・AMRは他に存在しない。このスピード感は、物流の現場にとって圧倒的なアドバンテージとなる。
参考:「t-Sort」導入事例 富士ロジテック・ネクスト様 動画
「『t-Sort』5台だと、1時間あたりの仕分けは500~700個程度となります。これだと人間がピッキングするケースと費用対効果は同程度になりますが、『t-Sort』導入台数を増やし1時間あたり1000個以上の仕分けを実現すると、『t-Sort』の費用対効果が上回ってきます」──加えて、仕分けミス撲滅も、「t-Sort」導入のメリットと評価するお客さまが多いと、プラスオートメーション 西川耕平氏は説明する。
「t-Sort」をオペレーションする上では、必ず製品のバーコードを読み取ることとなる。結果として、仕分けと同時に検品することができる。仕分け後に検品を行っている現場では、この1工程をカットできる上、仕分けの精度向上も見込めるのだ。
物流ロボット導入におけるキャズム(溝)を越えるヒント
キャズム(溝)とは、ある製品やサービス、もしくは技術などが、社会に普及する要因(もしくは「普及しない要因」)を考えるイノベーター理論において、初期市場(おおよそマーケット全体の16%)を越え、社会普及する上で障害となるハードルを指す。
今回の国際ロボット展訪問を経て、私は物流ロボットのマーケットがキャズムを越えるためには、「面倒くさい」「分からない」を払拭しなければならないと感じた。
「『誰も知らない・分からない、未知のスペックを導き出すこと』、このハードルは、物流ロボットがキャズムを越える上で、欠かせないプロセスとなる」──パナソニックの宅配ロボットに対し、私はこのように述べた。だがことはそう簡単ではない。「そんな面倒で手間も掛かることはやってられないから、誰か答えを教えてよ!」というのが、大半の事業者の本音だろう。
もちろん、コンサルティングファームに依頼し、徹底的に業務分析を行い、物流ロボット導入の最適解を導くという方法もある。だがこの方法は、具体的な成果や効果が発揮される前に多大な初期費用が掛かる。そして導かれた最適解は、あくまでコンサルティング実施時の最適解であって、ビジネススピードの早い現代においては、1年後2年後には最適解でなくなっている可能性も高い。
マーケット、ビジネス、もしくは業務の変化に合わせて修正が効くこと。
そして、場合によっては中止・撤退できることは、VUCA(※混沌として予測がつかないこと)の時代と呼ばれる今だからこそ、とても大切である。
今回の国際ロボット展において、融通が効きやすい自走型ロボットの存在感が大きかった理由は、この点にあるのではないか。
加えて、自走型ロボットは、倉庫内作業において必須の「モノを移動する作業」を代替し、人を解放することができる。「シンプルで効果が分かりやすいこと」、これもキャズムを越える上では、とても重要だ。
もう一つ注目すべきは、初期投資コストゼロのサブスク型でロボットを提供するという+Automationやラピュタロボティクスのビジネスモデルである。
「使ってみないと分からないよね...?」──このように考える事業者は、決して少なくないはずだ。こういった事業者にとって、スモールスタート可能な、初期投資コストゼロ&サブスクというビジネスモデルは、願ったり叶ったりだろう。
導入へのハードルを下げるという意味で、これも物流ロボット普及に向けたキャズムをクリアするために、大切なことである。
今回、+Automationから招かれ、訪問した国際ロボット展は、多くの学びを得る機会となった。物流ロボットマーケットがどのように拡大していくのか、今後の動向に注目したい。