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​​物流の2024年問題で生じる荷主への影響|必要な対策を理解しよう​

作成者: +A 編集部|23/10/23 4:48

物流業界の「2024年問題」は、20244月に施行される働き方改革関連法によって生じる諸問題のことです。トラックドライバーの労働時間が規制され、荷主や消費者にも影響が出ると言われています。 

 

物流各社で改善に向けて取り組まなければいけないものの、現状思うように進んでいない企業も多いです。 

本記事では2024年問題の概要をわかりやすく解説するとともに、物流業界が直面する課題についてもまとめました。2024年問題に向けてやるべき取り組みも紹介していますので、ぜひお役立てください。 

20244月に、自動車運転業務を対象とした「時間外労働の上限規制」が施行されます。これによりトラックドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限され、輸送能力の不足が懸念されている現状です。 

時間外労働の上限規制により以下のような諸問題が生じる可能性があり、物流業界の2024年問題」と言われています。 

  • 必要なものが運べなくなる 
  • ドライバーの収入が減少する 
  • 物流企業の売上と利益が減少する 

これにより、荷主が受ける影響も少なくありません。 

本記事では、物流業界の2024年問題で生じる荷主への影響や、知っておくべき「荷主勧告制度」について解説します。課題への理解を深め、対策をとることが重要です。ぜひ最後までご覧ください。 

 

1. 物流業界の2024年問題で生じる荷主への影響 

物流業界の2024年問題は、働き方改革関連法の施行により、トラックドライバー(自動車運転業務)の時間外労働の上限規制によって生じる諸問題です。時間外労働の上限が年間960時間に制限されます。 

まずは荷主にどのような影響があるのかを理解しておきましょう。 

  1. 荷主が支払う運賃が値上がりする 
  2. 必要なときにモノが届かない恐れがある 
  3. 納品スケジュールの見直しが必要になる 
  4. 長距離輸送が困難になる 
  5. 輸送を断られる可能性がある 

(1) 荷主が支払う運賃が値上がりする 

2024年問題では、ドライバーの収入の減少や、物流企業の売上と利益の減少が懸念されています。労働時間が制限されるため、その分荷物が運べなくなる可能性があるのです。 

それをカバーする対策として、運賃の値上げが想定されています。 

実際に佐川急便では、2023年に「飛脚宅配便(飛脚クール便含む)」「飛脚特定信書便」「飛脚ラージサイズ宅配便」の運賃が値上げになりました。その動きはさまざまな運送業者でさらに拡大していく見込みです。 

運賃の値上がりは、荷主の負担の増加に影響します。その結果、商品や送料の値上げを余儀なくされる可能性があり、最終的に消費者の負担も増える恐れがあります。 

(2) 必要なときにモノが届かない恐れがある 

ドライバーの人手不足は深刻化する一方です。物流コンサルティング企業であるNX総合研究所の調査によると、ドライバー不足により2030年には輸送能力の19.5%(5.4億トン)が不足すると推計されています。(参考:NX総合研究所/「物流の2024年問題」の影響について 

つまり、必要なときに必要なものが届かなくなる恐れがあるのです。原料などの輸送が間に合わず、製造の遅れが生じる可能性もあります。 

(3) 納品スケジュールの見直しが必要になる 

ドライバー不足の改善が物流業界の大きな課題となっている一方で、ECサイトが普及し、モノを運ぶ需要は増え続けています。 

積載効率を高めて無駄をなくすために、荷主側は納品スケジュールの見直しが必要になるかもしれません。現時点で翌日配送に対応しているECサイトも、2024年問題の影響で対応が難しくなる可能性があります。 

なかには当日出荷の時間制限があいまいになっている荷主も多いでしょう。荷主の要望を断りきれず、無理な作業を強いられている物流倉庫も少なくありません。 

今後は受付時間が徹底され、今まで対応してもらっていたことが難しくなる可能性があります。 

(4) 長距離輸送が困難になる 

ドライバーをはじめとする自動車運転業務では、勤務間インターバル制度の導入が進んでいます。前日の終業時刻から翌日の始業時刻の間に、一定時間以上の休息時間を確保する取り組みです。 

20244月から、ドライバーの休息時間が9時間を下回らないようにする必要があります。また、できる限り11時間以上の休息時間をとるようにしなければなりません。その結果、長距離輸送が困難になる可能性が懸念されています。 

(5) 輸送を断られる可能性がある 

今までは、荷主が条件の良い物流事業者を選ぶ傾向がありました。しかし、今後は物流事業者側で荷主を選ぶ可能性も出てきます。 

例えば長尺物や危険物など、積み降ろしに時間や手間のかかるものほどドライバーの負担が増え、労働時間の増加に直結します。作業効率を高める対策を講じなければ、運んでもらえないリスクがあるのです。 

2024年問題で大きな影響を受けないためには、荷主側も協力的な姿勢を見せて、話し合いに応じなければなりません。 

 

2. 荷主が知っておくべき物流の現状と「荷主勧告制度」 

 

2024年問題では、特に時間に関する制限への対応が求められています。荷主側は、委託している物流事業者の輸配送状況や、倉庫内作業の現状を理解することが大切です。 

こちらでは、物流業界の現状と、荷主への影響が大きい「荷主勧告制度」について解説します。 

(1) トラックドライバーにかかる負担 

トラックドライバーの労働時間には、以下のような業務が含まれます。 

  • 運転時間 
  • 積み降ろし 
  • 検品・仕分け 
  • 荷待ち 
  • トラックの点検 

例えばトラックに荷物を積み込む場合、行き先ごとに仕分けながら手作業で行うと、それだけで2時間以上かかることもあります。納入時もパレットに仕分けながら手作業で行えば、同じくらいの時間が必要になるでしょう。 

また、国土交通省が令和3年に行った調査によると、トラックドライバーの荷待ち時間の平均は1運行あたり1時間34。時間指定があるにも関わらず、荷待ちが発生している現状が明らかになっています。(参考:国土交通省/トラック輸送状況の実態調査 

 特に荷待ちは大きなタイムロスになるため、早急に改善したい課題です。 

(2) 物流倉庫内で生じる作業面の課題 

倉庫内作業者の時間外労働の上限規制は、45時間、年間360時間を原則としてすでに施行されています。自社商品の出荷を委託している場合は、こまめなやり取りを行い、課題を共有することが大切です。 

どのような流れで出荷されているのか、荷主側も正確に把握しておきましょう。場合によっては付帯作業の見直しも必要です。 

特にECサイトの場合は、ラッピングやセット組み、ラベル貼りなど、さまざまな付帯作業が発生します。季節による入れ替わりが激しい商品もあるでしょう。 

2024年問題において運送面で課題が生じるのであれば、それを補うために倉庫内作業の改善に向けた取り組みを求められるかもしれません。

(3) 荷主勧告制度を意識した2024年問題への取り組み 

荷主勧告制度とは、トラック運送事業者の法令違反行為に荷主の関与が判明すると、国土交通大臣が荷主勧告を発動し、荷主名や事案が公表される制度です。 

 具体的に以下のような事案が荷主勧告に該当します。 

  • 荷待ち時間の恒常的な発生 
  • 非合理な到着時刻の設定 
  • やむを得ない遅延に対するペナルティ 
  • 重量違反等となるような依頼 

事案によっては「警告」や「協力要請」の措置を設けているため、荷主も他人事ではありません。 

また、国土交通省の調査によると、荷主による違反原因行為の割合でもっとも多いのは「長時間の荷待ち」で49。ほぼ半数を占めており、荷待ち時間への早急な対応が求められます。(参考:国土交通省/取引環境適正のための荷主対策・連携 

なお、これだけ国を挙げて2024年問題への取り組みが行われているものの、荷主勧告制度の存在すら知らない荷主がとても多いです。その割合は荷主の半数以上。おおよその内容まで理解している荷主は、全体の20%ほどしかいないことが大きな課題となっています。(参考:国土交通省/R3年度トラック輸送状況の実態調査結果

 

3. 荷主とトラック事業者が連携して行うべき4つの対策 

2024年問題を乗り越えるためには、荷主とトラック事業者の連携が不可欠です。こちらでは、双方で連携して行うべき対策を紹介します。

  1. 付帯作業の把握と効率化 
  2. 輸送手段や納品スケジュールの見直し 
  3. 運賃の見直しと運送以外に発生する料金の把握 
  4. 出荷作業における自動化の検討

(1) 付帯作業の把握と効率化 

トラックドライバーが荷物を積み降ろす際にどのような業務を行っているのか、荷主もきちんと把握しておくことが大切です。そして、改善できるところがないか話し合いましょう。 

 例えば手作業で積み込んでいるのであれば、パレット単位で運ぶことで効率化につながります。送り状を見て、行き先(地方)ごとに荷物を分けておくのもよいでしょう。 

荷主のちょっとした改善が、ドライバーの負担を軽減します。 

(2) 輸送手段や納品スケジュールの見直し 

2024年問題に対応するためには、輸送手段や納品スケジュールを見直すことも大切です。勤務間インターバル制度の導入で懸念されている、長距離輸送への対応も考えなければなりません。 

一部の地域では、複数の荷主とトラック事業者の連携による輸配送の共同化が進んでいます。積載効率を高めるための対策を整え、消費者への影響が出ないようにするための工夫が必要です。 

また、BtoCではできる限り再配達にならない配送方法の導入を検討する必要があります。梱包資材から見直すべきものもあるでしょう。

(3) 運賃の見直しと運送以外に発生する料金の把握 

20204月に国土交通省は、トラック事業者が法令を遵守し、持続的に事業を行う際の参考となる標準的な運賃の告示を行いました。トラックドライバーに対する以下の改善目的があります。 

  • 労働環境の改善 
  • 人手不足の解消 
  • 安定した輸送力の確保 

これにより、運賃の見直しを求められる荷主の増加が予測されます。要望に応じないと、荷主企業の名前が公開されるリスクがあるため、今後は拒めない状況になってくるでしょう。 

 標準的な運賃の告示内容は、国土交通省の資料「トラック輸送の標準的な運賃」をご覧ください。全日本トラック協会では「標準的な運賃計算シミュレータ」を用意していますので、会員の方は活用してみるのもよいでしょう。 

なお、標準的な運賃には料金(待機時間料、積込・取卸料、附帯業務料)や実費(高速道路利用料、フェリー利用料、燃料サーチャージ等)は含まれていません。別途収受する必要があります。 

(4) 出荷作業における自動化の検討 

荷主とトラック事業者が連携して、出荷作業の自動化を検討するのも対策の1つです。自動化によって生産性が高まり、ドライバーの荷待ち時間の削減に貢献します。 

2024年問題は物流業界のトラックドライバーに大きく関わることですが、倉庫内作業でも省人化・省力化に向けた対策が必要です。人手不足は物流業界全体の課題であり、体力的にきつい仕事であるという認識が浸透しています。 

なお、当社プラスオートメーションでは、出荷作業の効率化につながるロボットをサブスクリプションで提供しています。労働環境の改善に有効ですので、あわせてご検討ください。 

 

4. ホワイト物流推進運動への理解も必要 


ホワイト物流推進運動は、物流業界を安定させるために、魅力のある「ホワイト」な職場づくりを行う取り組みです。国土交通省が、経済産業省や農林水産省等と連携して行っています。 

 荷主企業とトラック事業者(物流事業者)が連携して対策を講じることで、双方にメリットがあります。 

荷主は企業のイメージアップにつながり、売上や就職者の増加が見込めるでしょう。トラック事業者は信頼性が向上し、取引企業の増加につながります。 

詳しい概要は「ホワイト物流推進運動ポータルサイト」でご確認ください。 

 

5. まとめ 

物流業界の2024年問題は、荷主への影響も少なくありません。荷主に大きく関わる「荷主勧告制度」を理解し、トラック事業者と連携して対策を講じる必要があります。  

まずは会社全体で2024年問題への理解を深め、危機感をもちましょう。トラック事業者の課題を共有し、今後どのような影響を受ける恐れがあるのか把握しておくことが大切です。 

なお、物流倉庫内の見直しをご検討の方は、人手不足を解消する方法の1つとして当社のロボットを使った自動化もご検討ください。初期費用ゼロ、月額定額制でご利用いただける安心のサービスです。 

今後の方向性についてのお悩みやご不明な点がある方は、下記のフォームよりお気軽にお問い合わせください。