KPIは「Key Performance Indicator(s)」の略で、日本語では「重要業績評価指標」と訳されます。企業など組織の目標達成度合いを測るうえで参考となる様々な定量的な指標(データ)、もしくはその指標を用いる管理手法のことを指します。
物流管理指標(物流KPI)は、物流管理が適切であるかどうかを判断するための指標です。倉庫内業務においても物流KPIを用いることで、企業は自社の倉庫内業務の問題点を把握し、効率化を図ることができます。
物流管理指標(物流KPI)は大きく分けて、「コスト・生産性」「品質・サービスレベル」「物流条件・配送条件」の3つの指標で成り立っています。この3つの指標をチェックすることで、倉庫内業務における問題がどこにあるのかを明確にできます。原因が「人」なのか「フロー」なのか、あるいは別の問題なのかなどを特定し、対処していくことが可能となります。
コスト・生産性に関するデータとしては、「保管効率」「人時生産性」「数量あたり物流コスト」「日次収支」などがあります。
「保管間口数÷総間口数」
倉庫など物流現場の保管スペースが適切に活用できているかを測る指標です。
「処理ケース数÷投入人時」
物流現場におけるピッキング、仕分けや検品、梱包作業等の生産性を測る指標です。作業員一人当たりやライン別、時間帯別での算出が可能です。
「物流コスト÷出荷数量」
物流現場で発生する諸コストのうち、商品または製品の一定の数量ごとの物流コストを算出します。
「1日当たりの収益-1日当たりのコスト」
四半期や年次等で算出される財務会計上の収支決算に対し、より短期の日次単位で算出します。これによって物流現場の収支の悪化を未然に察知し、業務改善に繋げます。
品質・サービスレベルに関するデータは、「棚卸差異」「誤出荷率」「クレーム発生率」などが主な項目になります。
「棚卸差異÷棚卸資産数量」
紛失や盗難、誤出荷等による帳簿在庫と実在庫の差異を計測し、在庫管理の改善に活用します。
「誤出荷発生件数÷出荷指示数(受注数等)」
品違い、数量違い、出荷先違い等の誤出荷の発生率を示します。
「クレーム発生件数÷出荷指示数(受注数等)」
顧客からのクレームの発生率を表します。上記の誤出荷のほか、書類のミス、作業者の挨拶・服装等、サ
ービスの官能評価にも用いられます。
物流条件・配送条件には、「出荷指示遅延件数」「配送頻度」「納品先待機時間」「納品付帯作業時間」「納品付帯作業実施率」などがあります。
「〆以降の出荷指示件数」を指します。出荷指示の遅延は物流効率を阻害することから、顧客別等で計測し、遅延を改善するために活用します。
「配送回数÷営業日数」
配送先当たりの配送頻度を計測することで、多頻度納品の改善に役立てます。
納品先における待機時間の平均です。納品先で指定時間に到着したにも関わらず待機が発生する場合、その改善のために待機の発生状況を計測するものです。
納品先における付帯作業時間の平均です。納品先で契約以外の荷役、開梱、検品、棚入れといった付帯作業が発生する際に、その作業時間を計測します。契約外の作業が発生している場合、それを是正するため等に活用されます。
「実施回数÷納品回数」
前項と同様、契約外の付帯作業を実施している場合、物流効率を阻害することから、それらの付帯作業の実施状況を計測するものです。(参考:国土交通省「物流事業者におけるKPI導入の手引き」より)
上記はあくまでも、一般的な倉庫内業務に即した典型的な指標であり、ほかにも様々な指標が存在します。また、必ずしもこれらの指標の全てを使用しなければならない、あるいはこれらの指標の基準を満たせば良いというわけでもありません。各企業が、自社が置かれている状況や抱える課題、取るべき戦略、将来の目標などに応じて適切な指標を選択し、それをクリアすることが求められます。
次に、倉庫内業務で物流管理指標(物流KPI)を導入するメリットについて具体的に見ていきましょう。物流管理指標(物流KPI)には、問題点を可視化できる「見える化ツール」、コミュニケーションが促進される「コミュニケーションツール」、合理的で公平な評価につながる「評価ツール」としての役割が期待できます。
物流の現状をデータで把握することができるようになり、業務プロセスの問題点を可視化できます。物流管理指標(物流KPI)によって客観的に計測したデータを分析することで問題点が明らかとなり、対策を講じることが容易になります。
物流に携わる様々な立場の人たちに対して、客観的なデータに基づいた意思決定を行うことにより、納得感の高い仕事をしてもらうことができます。メンバー間で共通認識ができ、コミュニケーションが取りやすくなることも大きなメリットです。
感情や感覚ではなく、定量的に測定した客観的データを管理することで、合理的で公平な評価ができるようになります。努力し改善した結果を正当に評価されることで仕事に対する意欲を向上させ、問題解決のための努力を促すことにつながります。
また、表面上のコストや効率性だけでなく、安全性の確保や品質の保持など全てを総合的に把握することで業務の質を上げ、企業価値をより高めることも可能になります。
メリットの一方で、倉庫内業務における物流管理指標(物流KPI)の導入にはいくつかの課題もあります。
物流業務においては、人手による部分がまだ多くを占めています。とくに走行データなど具体的な数値から指標化されることが多い輸配送の領域に比べ、倉庫内の業務では人の動きなどアナログの要素が強く、データ化されていない部分が多くあります。そのため、定量的な指標の設定が難しいという問題があります。
物流管理指標(物流KPI)の導入においては、データの取得や業務改善の実施などで全社的な協力体制を構築することが不可欠です。その一方で現場は多忙であり、なおかつ外部から業務実態を可視化されることに抵抗を感じる傾向もあります。
物流管理指標(物流KPI)の導入にあたっては、経営側からトップダウンのかたちで現場に協力を求めるのが近道となります。その際には、KPIの活用が企業の経営方針と整合していることを前提に、現場に過度な負荷をかけず、効果が実感できない指標を設定しないなどの配慮をすることが求められます。
データ収集・分析等の業務負荷が大きいことを理由に、物流管理指標(物流KPI)を導入していないというケースも見られます。管理業務を担う人材がいないためにKPIを導入できずにいる、という企業も多く存在するようです。
対策としては、KPI管理者の人材育成を図ると同時に、導入時には必要最小限のKPIとする、既存のデータやシステムを活用する、専門業者などの外部リソースを利用するなど、なるべく負荷をかけない方法を検討する必要があります。
ここまで見てきたように、物流業界における業務の効率化に向けて物流管理指標(物流KPI)を導入することは極めて有効です。人材不足や業務の偏り、無駄なコストなどの問題に対して、なぜそうなったのか原因を分析するためには必要不可欠な手法となります。ただし倉庫内業務の、人の手を介することが多いアナログの領域では、そもそものデータ化に課題がある場合も多いのが現状です。自動化の目的に省人化や効率化があるのは当然ですが、それ以上に「見える化」の効果がある事を忘れてはなりません。
プラスオートメーションでは、物流効率化における様々な課題を解決する物流ロボットを用いた自動化のソリューションを開発しています。物流管理指標(物流KPI)導入の第一歩となる倉庫内業務のデータ化・見える化のための自動化設備導入へ向け、並走させて頂ければ幸いです。
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