2020年、世界に大きな影響を及ぼした「新型コロナウイルス感染症」。旅行業界や百貨店業界、システムインテグレーター業界など、影響を受けた業界はさまざまで、物流業界も例外ではありません。
では具体的に、新型コロナウイルス感染症の拡大は、物流業界にどのような影響を及ぼしたのでしょうか? 物流業界に起こった変化や、コロナ禍での物流業界の課題などについて解説します。
新型コロナウイルス感染症の拡大は、物流業界にさまざまな変化をもたらしました。まずは、航空・海運運賃の高騰です。旅客便やコンテナ船の本数が減ったことで、物流網が縮小し、国際物流のコストが上昇しました。
また、「ステイホーム」の言葉とともに外出自粛の流れが到来し、巣ごもり需要が拡大したことも、新型コロナウイルス感染症の影響のひとつです。政府や地方自治体が不要不急の外出を控えるように呼びかけるなか、人々は自宅にいながらショッピングができるECを活用するようになり、ECに関する配送が増えています。
そして、ECの活用が加速し、個人向け配送が増えたことで、物流事業者の負担が増加しているのが現状です。ECの需要に供給が追いついていない結果、人手不足や長時間労働が発生しているのです。
2020年3月、公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会(JILS)が発表した調査「新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大による物流への影響について」によると、「新型コロナウイルス感染拡大により、業務上での課題が発生しましたか」の質問に対して「一部に課題が発生した」と答えた物流事業者がもっとも多く、43.33%でした。
「全社的な課題が発生した」と答えた物流事業者は14.44%だったため、合わせると課題が発生した事業者は半数以上になっています。
また、2021年1月にJILSが発表した調査「新型コロナウイルスの感染拡大による物流・サプライチェーンへの影響」によると、82.4%の物流事業者が人材・組織に関する課題解決を最優先に置いていることがわかりました。コロナ禍において、雇用の確保や従業員の安全確保、在宅ワーク体制の整備、業務のデジタル化などに取り組んでいます。
そして同調査において、「サプライチェーンにおける自動化・ロボット化・デジタル化への投資および投資への検討状況」について、53.8%の物流事業者が「変化がある」と答えました。そのうち「自動化、ロボット化、デジタル化への積極的な投資、もしくは投資への検討が加速している」と回答した物流事業者は81.6%にも達しています。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受ける物流業界は、どのような対応を取るべきなのでしょうか? コロナ禍において、物流事業者がやるべきことについて説明していきます。
自社でクラスターが発生すると、「濃厚接触者の出勤停止」や「倉庫やオフィスの消毒で業務の一時停止」などの対応が求められます。そうなった場合、生産性が低下するうえ、取引先からの信用が低下することも否めません。感染者を出さないためにも、改めて基本的な感染対策である、マスクの着用・手洗いうがい・検温は徹底しましょう。
また、新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐためには、密閉・密集・密接の「3つの密」を避けなければなりません。ピッキングや仕分け、検品等、多くの人手が必要な作業環境には十分な配慮をしていきましょう。
また、作業場以外での休憩所、喫煙所、昼食の場所等も密を回避するとともに会話や食事等感染機会が増えがちなので、環境とあわせて作業者教育も徹底していく必要があります。
巣ごもり需要の増加で物流へのニーズが高まる中、作業環境への配慮には限界があります。様々な物流作業を出来る限りマテハン機器やロボットにより自動化し、省人化に取り組んでいく事が求められると思います。
また、そうしたロボットと人が協働していく作業環境が、より求められ、受け入れられる世の中になっていくのではないでしょうか。
今後も続くことが予想されるコロナ禍で、物流を止めずに日本経済を支えていくためには、物流事業者一社一社が課題に向き合う必要があります。まずは、前述したとおり、密を避けるべく省人化するために、物流システムの自動化に取り組むことが重要です。
また、ドライバーや倉庫内の作業員など、対面が避けられない従業員の感染リスク対策も取らなければなりません。一事業者として対策を進めていくことはもちろん、従業員一人ひとりが感染を拡大させない意識をもつ必要があります。
そして、都道府県間の移動を控えるなどの移動制限があるなか、物流というライフラインを止めずに業務を維持していくことが求められるでしょう。
こうして改めて新型コロナウイルス感染症拡大の影響を見直すことで、物流業界に何が必要なのか見えてくるかもしれません。
今、物流業界に求められていることのひとつとして、これまで潜在的だった省人化などの課題の、いち早い解決が挙げられるでしょう。その課題解決策として、ロボットの導入を検討している企業が増えています。
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