3PL(サードパーティー・ロジスティクス)とは|活用法や注意点についても解説
本記事では、EC物流にまさに取り組もうとされている方、アウトソーシングをご検討されている方、すでに取り組んでいるが中々成果が見られない方などに向けて、EC物流が抱える課題や改善点をご紹介します。
近年、インターネット通販を中心とした、いわゆるECが目覚ましい伸長を見せています。それに伴い、ECにおける物流もその規模を拡大していますが、そこには多くの問題や課題もあります
本記事では、EC物流にまさに取り組もうとされている方、アウトソーシングをご検討されている方、すでに取り組んでいるが中々成果が見られない方などに向けて、EC物流が抱える課題や改善点をご紹介します。
目次: 1. 3PLってなに? 2. サードパーティーの意味は? ファーストパーティー、セカンドパーティーも 3. 3PLのメリット/デメリットとは 4. 自社でできる物流業務の効率化も 5. まとめ- 倉庫にあった最適な方法を選ぶことが◎ |
1. 3PLってなに?
(1) 3PLは、サードパーティー・ロジスティクスの略称
3PLは「サードパーティー・ロジスティクス(third-party logistics)」の略称で、物流業務形態の一つ。企業における物流業務を第三の事業者に委託する業務形態のことを言います。
国土交通省による定義では、「荷主企業に代わって、最も効率的な物流戦略の企画立案や物流システムの構築の提案を行い、かつ、それを包括的に受託し、実行すること」とされています。
(引用元:国土交通省 - 3PL事業の総合支援)
(2) 3PLで、ロジスティクスの最適化が可能に
企業活動において、生産から販売に至る物流を一元管理し、最適化するロジスティクスは極めて重要ですが、ロジスティクスを効率的に行うためには倉庫や運搬車両、人的資源などのインフラの充実が不可欠であり、そのためには大きな費用や労力、時間などが必要となります。
そこで3PLを使い、荷主が物流機能の一部もしくは全体を第三者企業に委託することで、物流の効率化が可能となります。また、3PLの大きな機能としては、荷主の利益を前提としたロジスティクスの効率的な企画や設計、運用を行うことが挙げられます。
2. 成長し続けるEC市場
近年、EC市場は大きく成長をし続けていますが、その背景はなんでしょうか。
(1)スマホなどの普及によるモバイル化
ECは1990年代以降、インターネット環境の拡充によって大きく発達しました。さらにその後、タブレットやスマホといったモバイル端末の普及で、EC市場はいっそう活性化しています。
(2)新型コロナウイルスの影響で巣ごもり消費拡大
また、冒頭でも触れた通り、昨今の新型コロナウイルス感染拡大の影響で外出自粛が一般化し、いわゆる"巣ごもり需要"が拡大。不要不急の外出を控えることで店舗から足が遠のき、インターネット通販や宅配サービスが急増しています。店頭で商品を選び、気に入ったものを買うという従来の購入スタイルから、ネットで購入する利用者が増えているのです。
(3)多くの企業が、実店舗からECサイトへシフト
上記の、スマホ普及やコロナ禍での巣ごもり消費拡大の流れを受け、これまで店舗のみで展開していた企業がECへとシフトする事例も多く見られます。
各企業はEC市場拡大と巣ごもり需要に対応するためにECサイトを立ち上げ、ネット通販に力を入れ、それがまた新たなユーザーを呼び込み、ますますEC市場が拡大するという循環となっています。
3. EC物流の流れ
ここで、EC物流の大まかな流れを見てみましょう。EC物流の業務は、おおよそ以下のようなフローで進行します。
上記にある「流通加工」は、流通段階で商品の価値を高めるために様々な加工を施すことを言います。EC物流では、個別包装やギフトのためのラッピング、メッセージカードの添付などがそれにあたります。
流通加工はいま注目されている、顧客のニーズに応じ、モノに付加価値を提供するサービス「VAS(Value-Added Services=付加価値サービス)」の一種であり、EC物流の主要な業務の一つとなります。
流通加工は、製品を製造するための物流である「購買物流(インバウンド・ロジスティクス)」にも存在しますが、EC物流ではより発生する頻度が高くなります。
4. EC物流の課題
それでは、EC物流の課題にはどんなものがあるでしょう。
EC物流の特徴でも触れましたが、倉庫から店舗に出荷するBtoB配送とは異なり、BtoC主体のEC物流では倉庫から各個人に商品を届けることが基本となります。
BtoBであれば大口配送が多く、複数の商品を同梱することが可能ですが、EC物流では個別の対応が求められます。そのためEC物流では、非定型化・複雑化・高付加価値にいかに対応するか重要となります。
主なEC物流の具体的な課題としては、以下のものが挙げられます。
(1) 荷主から求められるオペレーションが多様
荷主と約束しているサービスレベルによっては、オーダーごとに個別の対応を求められることもあります。例えば、
・「5,000個ある荷物の中から、特定の1個を見つける」
・「固有のコードがついていないチラシを同梱する」
・「混載で入荷した商品に、それぞれ個別でバーコードシールを貼る」
・「複数商品をアソートして袋詰めする」
など、バリエーションは千差万別です。
まさに、「オーダー数だけ要求がある」ことがEC物流の課題となります。特に、システムが成熟してない倉庫であれば、より大きな負荷がかかります。
(2) 常に「最短納期」が基本に
EC物流は、とりわけ納期が重要です。BtoB倉庫のように、ある程度オーダーが溜まるまで待ち、物量をまとめて出荷するなどということはなく、基本となるのは「最短納期」です。インターネット通販では当日出荷・当日配送や時間指定配送などが常態化しており、倉庫側も常に最短納期での作業を求められます。
たとえば「東京23区であれば、午前中にオーダーを入れればその日の内に荷物が届く」という受注条件で、当日出荷、当日配送を実現するためには、15時にはもう輸配送キャリアへ荷物が渡っているという状態にする必要があります。これらに対応するために、倉庫業務の集中化や迅速化など大きな負担がかかることになります。
(3) 急なキャンセルなどへの対応が必要
倉庫側が、届け先(お客様)からの急なキャンセルや返品に対して、迅速な対応をしなければならないこともEC物流ならではの特性です。
「注文したが、キャンセルしたい」という際の受付・処理や、「色を変えたい」「ひとまわり大きなサイズのものが欲しい」などのオーダー変更に応じて該当の商品を探し回るなど、倉庫スタッフに大きな負担を強いることになります。
(4) 繁忙、閑散の波が激しい
EC物流の大きな特徴として、繁忙、閑散の波が激しいことも挙げられます。
たとえば、アパレル関係のファッション・アイテムでは、季節ごとの装いやその時々のトレンドで出荷量が変わったり、あるいはメディアで取り上げられたりSNSで評判が拡散されることでオーダーが急増する、といった状況が起こります。そのため出荷量の見通しが立てづらく、したがって人材の確保も難しい、という事態に陥りやすくなります。
(5) BtoCであるがゆえに、一度のミスが致命的に
届け先(お客様)にとって荷物は、"一期一会"のかけがえないものであることも大切な要素です。
倉庫にとっては1億分の1のミスであっても、お客様からすれば1分の1であり、一度のミスでその企業に対する印象を決定づけることにもなりかねません。場合にはよっては、大切な顧客を失うことにつながります。同時に、こうした失敗が起こると、荷主からの信用を一気に失う危険性もあります。
その意味でEC物流のBtoC倉庫はBtoB倉庫より、小さなミスに対してもはるかにシビアな現場と言えるでしょう。
(6) 荷物の保管が必要
荷物の保管もまた、EC物流では大きな課題です。
システムが成熟していない倉庫では、先日付で配送指定日が入っている場合、「引き当てせずに、WMS(Warehouse Management System=倉庫管理システム)に残しておく」、もしくは「梱包して、荷物の姿で倉庫に保管しておく」などの対応をする必要が生じます。
保管には盗難や火災など安全面でのリスクがあることに加え、本来は必要のないスペースを占有します。これらはいずれも、物流コストを押し上げる要因となります。
(7) 在庫管理・調整が難しい
在庫管理者には、多品種小ロットの商品が多いEC物流ならではの技量やセンスが要求されます。できるかぎり余剰在庫を排し、空き容積を最小化することは簡単ではありません。
場合によってはバイヤーの買い付けに対して空き容積を確保するために、調整(=メーカーへの返品)を行う必要もあります。その際には返品物の出荷が生じ、そこでもコストがかかります。そのような事態を避けるために、在庫管理者には在庫の持ち方に対する優れたセンスが必要となります。
(8) 個人情報の厳重な取り扱いが必要
BtoCの拠点となるEC物流の倉庫には、膨大な量の個人情報が集まります。この個人情報の取り扱いも、EC物流における大きな課題です。
集約された個人情報は常に、漏洩や滅失などの危険に晒されます。これらを未然に防止し、個人情報を安全に管理することはEC物流における重要な責務となっています。
特に現代は個人情報の厳重な取り扱いが求められており、万が一の情報漏洩の際には賠償も含めて厳しい罰則が課せられる可能性があります。また同時に社会的な批判も浴び、企業の存続そのものが危うくなることもあり得ます。
個人情報保護のためには厳格なプライバシーポリシーを設け、また個人情報保護管理者を置くなどの様々な取り組みが必要となります。
5. EC物流の改善ポイント
ここまで見てきたようなEC物流の課題を改善するためには、どんな対策が有効でしょうか。
(1)作業を分解し、オペレーションを評価
まず考えられるのは、作業を「単純化」することです。対象となる作業を分解し、それがシンプルで吟味されたオペレーションかどうかを評価します。
例えば梱包作業の場合なら、そのオペレーションを先に挙げた「流通加工」を起点に分類し、「流通加工あり」と「流通加工なし」に分けます。
後者の「流通加工なし」の梱包作業を見直し、これまで余分な工数がかかっていた部分を改善したり、庫内のレイアウトや人員配置、動線を見直すことで効率化を図ります。
梱包作業以外のピッキングや組み立て、検品、出荷などでも同様です。これらの作業を単純化し、効率化することで、様々なメリットが期待できます。
(2)ロボットなどIT技術を活用
また、マテハン機器や物流ロボットなどのIT技術を活用することで物流オペレーションを自動化し、効率化や省人化、コスト削減などを目指すことも可能です。「流通加工なし」業務であれば、これらのIT技術を導入するメリットも大きくなります。
(3)省力化で得た人材を流通加工に傾注
分解した作業うちの「流通加工あり」の部分は本来自動化が難しく、多くの人手を要する作業が含まれます。それ以外の部分を自動化することで得られた人材を流通加工業務に振り分けることで、EC物流全体の質的な向上を実現します。
6. まとめ - 市場拡大を受け、EC物流の作業効率改善は急務
EC市場は今後も、まだまだ大きな伸びが見込まれます。しかし物量が少ない割に配送先が多く、配送料が高くなりやすいなど様々な課題もあります。物流管理の見直しや作業の単純化を行い、可能な部分を自動化するなどで作業効率の改善を図ることが必要になってきます。
EC物流に限らず、物流業界全体で慢性的に人材の確保が難しくなっている昨今、AI技術の進化で様々なデータ分析により、物流拠点の自動化も進んでいます。
+A mediaでは今後も引き続き、物流業界のお役立ち情報・最新情報をお伝えしてまいります。
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