近年、インターネット環境の拡充やスマートフォンの普及などにより、インターネット通販の市場が拡大しています。経済産業省の集計によれば、2022年の日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は、22.7兆円(前年20.7兆円、前々年19.3兆円、前年比9.91%増)に拡大しました。
これまで店舗のみで展開していた企業がECへと参入する事例が多く見られます。アパレル業界でも例外ではなく、消費者がECサイトで購入することが一般的になっており、ユーザーがECサイトで購入する機会が増えています。
さらに新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、不要不急の外出を控えることが一般化。そのため店舗に出向き、店頭で商品を選び試着し、気に入ったものを買うという従来の購入スタイルから、ネットで購入する機会が増加しています。
これまで実店舗のみで展開してきたアパレル企業やブランドも、EC市場の拡大と、コロナ禍での"巣ごもり需要"に対応するためにECサイトを立ち上げるケースが目立っています。
まず、一般にアパレル業界で扱われる商品は多様なニーズに対応するため、カラーやサイズが豊富に用意されていることが大きな特徴です。
カラーやサイズ異なる場合は、同じ商品名であってもそれぞれを別商品として扱う必要があります。同一商品を、在庫管理の最小単位であるSKUによって分類するため、他の業種に比べ在庫管理が複雑になりやすいという傾向があります。
季節やトレンドに合わせて量や内容が変化することもアパレル物流の特徴です。 冬場と夏場の衣類では「商品容積」が大きく異なることに加え、その時々の流行、あるいはメディアに取り上げられたり、SNSで評判が拡散されるなどで売れ行きが大きく影響されます。
その結果、波動性が大きくなり、短期間で大量の商品を在庫し、配送しなければならないという状況が起こりやすくなります。
アパレル物流では、カビや変色、劣化を防ぐための様々な対策や、材質ごとに適した温度・湿度での保管が求められます。
アパレルで扱うアイテムの素材は、衣類だけでもコットンやシルク、ウールなどの天然繊維、ポリエステル、ナイロンといった化学繊維、あるいはレザーなど多種多様。それぞれに対して、適切な管理が必要となるわけです。
また、梱包に際しても注意が必要です。家電や家具などパレットなどで配送するモノと違い、衣類はシワにならないようにハンガーのままや、たたんでの梱包が必要となります。小さなアクセサリーなどは箱に仕切りを入れ、小分けにするなどの対応も求められます。
前項で確認した特性から導き出される、アパレル業界の物流の課題とはどんなものでしょう。
アパレル業界では商品のライフサイクルは短く、基本的に1シーズンで売り切ることが前提となります。シーズンを過ぎた商品や流行が終わった商品は売れ残りや廃盤商品として、倉庫を占有してしまうことになります。アパレル物流では、その在庫を「どこに、どうやって、いつまで保管しておくのか」を荷主と協議して決定し、棚の容積確保を確実に行うことが求められます。
衣類をはじめとするアパレル商品はサイズや形状が豊富です。商品の形状や大きさがまちまちなことで物理的に多くの場所を取るため、保管料が嵩がちとなります。
また、アパレル商品ではたたみジワや型崩れを防ぐために、単純に段ボールに入れられない商品が多くあります。例えばスーツやドレスなどのフォーマル商材では、ハンガーに吊るした立体保管が必要です。そのため、どうしても手作業が増え、人件費など荷役費用がかかることになります。
商品の材質によって梱包の素材も変える必要があります。大きさや強度を考慮し、紙袋や手提げ袋、色付きポリ袋、気泡緩衝材、段ボール箱、厚紙ケース、ハンガーなどを使用します。このように梱包資材費多岐にわたることも、アパレル物流のコストを押し上げる要因となります。
アパレル商品を扱う小売店は小規模のものがメインで、各所に点在しており、その多くは街中にあります。一度に配送する物量も多くないため大型のトラックなどは使いにくく、個店対応で荷下ろしをするなどの作業も多いためドライバーへの負担も大きくなりがちです。 手間がかかることで、人件費など配送コストがかさむ要因となります。
上記に挙げたアパレル物流のコストを削減するためには、どんな対応策があるでしょうか。
まず、自社の物流業務全体を見直し、現状でかかっているコストを正しく把握することから始めましょう。それぞれの作業に無駄はないか、効率化やコスト削減ができる点はないかなど詳細に検証し、様々なアイディアや方法を検討することが必要です。
その際に、重要なポイントとなるものを、以下に見ていきましょう。
まず、現在の保管スペースの見直しをすることが重要です。在庫の配置やレイアウトをいま一度見直しすことで、保管効率を上げることも可能です。
また配送に際しては荷物の積載率や車両の回転率、実車率を向上させることで、ドライバーの人件費などの物流コストを削減することにつながります。
現在の物流拠点における人員配置や動線など、作業効率を見直しすることも効果的な対策です。
倉庫内の作業には入庫やピッキング、出庫などがあり、作業者は動線に沿って移動します。人員配置や動線などを見直し、移動距離を短く引き直すことで作業効率が向上します。またピッキングのオペレーションを見直し、タッチ数を減らすことで作業効率の改善につながります。
ロボットによるピッキングの自動化など、IT技術の導入も有力な選択肢となります。知能化され、人と協働して物流倉庫で活躍する物流ロボットは近年、大きな発展を遂げています。ロボット化、自動化によって人員育成コストをかけずに、一定の生産性を確保することが可能となります。
導入のための初期費用はかかるものの、長期的な視点で見た場合のメリットとのバランスを見て、検討してみてはいかがでしょうか。
アパレル物流のノウハウを持つ専門業者へのアウトソーシングも有効な選択肢の一つとなり得ます。3PL(サードパーティー・ロジスティクス/third-party logistics)などを活用して物流業務を第三の事業者に委託することで、物流に労力を割くことなく、自社の中核事業に集中できるなどのメリットが生まれます。
アパレル物流に特化した専門業者は複数あり、それぞれ特色や得意とするサービスがあります。自社の現状やニーズを見極め、適切な業者選びを心がけましょう。複数の実店舗や、実店舗とECサイトを同時に運営しているのであれば、在庫をそれぞれで分けるのではなく、まとめて一元管理をすることを検討します。
在庫が複数の倉庫に分散されていると、それぞれの倉庫の在庫管理が把握しにくくなり、欠品や過剰在庫などのミスが起こりやすくなります。
自社で基幹システムを導入したり、ネクストエンジンやクロスモールなどの在庫管理サービスを利用するなどして在庫を一元管理することで、店舗間の在庫確認の手間やモノ・人の行き来が減り、物流をより効率的に行うことが可能となります。
アパレル業界に限らず、物流においては慢性的に人材の確保が難しくなっている昨今ですが、管理手法の発達や技術の進歩などで様々なデータ分析が可能となり、物流拠点の自動化も進んでいます。
物流倉庫の改善や方向性についてお悩みの方、まずは電話やオンラインで話を少しだけ聞いてみたい等、ご不明な点がございましたら、下記のお問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください。