荷役は運輸業における作業の1つであり、”にやく”もしくは”にえき”とも読みます。
荷物の積み降ろしや運搬など、入庫から出庫までの一連の流れの総称が荷役です。荷物を運搬する以外にも、荷揃え・ピッキング・仕分け・梱包などの業務にも幅広く携わります。
荷役で使用する運搬機械は、フォークリフト・トップリフター・クレーン・ダンプトラックなどさまざまです。業務や扱う貨物の種類によっても異なります。人の力によって行われる作業も荷役作業に含まれるので覚えておきましょう。
入庫から出庫まで幅広い業務に対応しなければならない荷役は、物流で大きな役割を占めています。
荷役に関わるいずれかの作業が滞るだけで大きなタイムロスとなり、生産性が低下するリスクがあります。ほかの作業にも影響すれば混乱が生じ、物流コストの増加にも直結してしまうのです。
いかに荷役の作業をスムーズに進められるかが、各物流倉庫が抱える課題だといえます。日々改善に努めるべく、荷役の各作業が属人的にならないよう、フォローし合える環境を整えなければなりません。
荷役の作業は多岐にわたりますが、こちらでは主な10個の作業内容について解説します。それぞれどのような作業を担っているのか確認していきましょう。
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車両や船、飛行機などの輸送機械から荷物を降ろす作業のことです。手作業だけではなく、フォークリフトやクレーンなどの、さまざまな運搬機械を使用する場合もあります。対応する機械の運転免許証が必要です。
物流施設内で荷物を移動させる作業のことです。フォークリフトなどの運搬機械を利用した方法だけでなく、台車や人の力で行った移動も運搬作業に含まれます。
トラックや船などで届いた荷物を物流施設内に受け入れることです。1日に大量に商品が入ることもあるので、荷物が混ざらないように迅速に移動させ、管理しなければなりません。
また、荷物の個口数が伝票と合っているかを確認するのも荷役の担当です。正しい商品かどうかの検品まで荷役が受け持つこともあれば、ほかの担当者が行う場合もあります。
入庫とは反対に、荷物を物流施設内から出すことです。似た言葉に「出荷」がありますが、出荷はオーダーを受けてから荷物を運送業者に預けるまでの一連の業務を指します。出庫は「施設内から荷物を出すまで」の業務なので、出庫は出荷業務の一部であるといえるでしょう。
入庫した商品を配送場所や品種別、オーダー別などに分類する作業です。出荷準備が整った商品をパレットで集め、運送業者別の置き場に分別する作業などもあります。
仕分けした商品を、ラックなどの所定の場所に置く作業です。先入れ先出しなどを考慮し、すでにある商品と入れ替える作業なども発生します。商品の正確な場所を把握しておかなければならないため、保管作業には在庫管理の意味合いも大きいです。
なお、保管時は取り扱いに気をつけなければならない商品もあります。置き場所がないからといって安易にパレットを重ねられないので、商品ごとの適切な保管方法を考えなければなりません。
商品を保管場所から取り出す作業で、ピッキングリストをもとに行います。荷役作業者が担当する場合、人の手では動かしにくい大型の商品の取り扱いも多くなるので注意が必要です。
また、フォークリフトでラックの高い位置に保管されている荷物を降ろしたり、その日の出荷に必要な分だけ事前に集めたりする作業(トータルピッキング)もあります。
ピッキングした商品の種類や数量に間違いがないかを確認する作業です。同時に、破損や汚れなどの不備がないかもチェックします。
不具合が発見された場合、入荷した商品自体が悪いのか、ピッキングなどの倉庫作業時にトラブルが発生したのかで、対処方法が大きく変わります。企業として信頼価値を高めるためには、不具合の原因をしっかりと見極め、再発防止につとめることが大切です。
検品が終わった商品を適切な箱に詰める作業です。荷役が扱う大型商品の場合、ストレッチフィルム(梱包用のラップ)やPPバンド(結束用のバンド)などを使用して荷崩れを防ぐ対策を施します。
パレット単位でトラックに積み込む場合は、フォークリフトなどの資格が必要です。
梱包まで終わった荷物を、車両や方面別に合わせてひとまとめに揃える作業です。個口数が多い場合、きちんと分別しておかないと運送業者の発送手続きに時間がかかる場合があります。
荷役は運搬機械の操作ミスや不注意によってともなう危険が多く潜んでいます。本章では、荷役作業の危険性について、厚生労働省のデータをもとに詳しく解説します。
厚生労働省によると、”陸上貨物運送事業における労働災害の75.5%が荷役作業時での災害である”と「荷役作業安全ガイドラインの解説」に明記されています。具体的な内訳は以下のとおりです。
荷役災害 |
75.5% |
交通労働災害 |
10.7% |
その他 |
13.8% |
運搬機械別に見ると、フォークリフトでの事故が約7割を占めています。
フォークリフト |
70.0% |
クレーン |
24.4% |
コンベヤー |
5.6% |
(参考:荷役作業安全ガイドラインの解説)
物流業界において、倉庫内での荷物の運搬にフォークリフトは欠かせない存在です。しかし高い位置にある荷物や不安定な荷物を運搬することも多く、少しの揺れや遠心力で荷崩れを起こす危険性などがあります。
荷役作業者に対して、災害を防止するために厚生労働省が取りまとめた「陸上貨物運送事業における荷役作業の安全対策ガイドライン」に沿った指導を行うことが重要です。
厚生労働省が注意喚起する荷役5大災害は、以下のいずれかが原因で起こる事故のことです。死亡災害の約8割を占めています。
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令和2年に発行された「令和2年労働災害発生状況の分析等」では、陸上貨物運送事業における死者数が87人、死傷者数が15,815人という結果です。どちらも全体の1割以上を占めており、決して少ない人数ではありません。
荷役作業者には荷役5大災害の危険も周知するとともに、物流事業者はその対策に務める必要があります。
こちらでは、荷役作業に有効な安全対策を5つ紹介します。
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物流事業者は厚生労働省が発行する「陸上貨物運送事業における荷役作業の安全対策ガイドライン」に沿って運搬機械における安全対策マニュアルを作成し、荷役作業者を指導することが重要です。
その際、大型商品など、取り扱いが難しい商品に対するマニュアルも個別に用意されているといいでしょう。荷役作業者全員が知っておくことで、いつもと違う作業者が荷役を行った場合でも適切な対応ができます。
厚生労働省では、荷役5大災害防止対策チェックリストを用意しています。物流事業者が施設内の荷役環境を見直すうえで役立つチェックリストです。具体的な事例に沿って荷役災害を学べる資料も揃っているので、荷役作業に危険がともなうことを会社全体で伝えていきましょう。
(厚生労働省:陸上貨物運送事業における荷役災害等を防止するための留意事項~重大な災害事例に学ぶ災害防止ポイント~)
リスクアセスメントは、職場内で起こりうるあらゆる危険性を洗い出し、対策や改善に務めるための作業です。作業に携わる一人ひとりの声を聞き、実施する必要があります。
荷役作業に限らず、会社全体で取り組むべき施策としても有効です。具体的なやり方は厚生労働省に関連資料や教材が用意されていますので、参考にしてみてください。(厚生労働省:リスクアセスメント等関連資料・教材一覧)
危険予知訓練(KYT)とは、作業を想定したイラストシートなどをもとに、作業にともなう危険要因を見つけ出して必要な対策を検討するものです。荷役災害になりかねないさまざまなケースを想定することで、実際の作業時のリスクを軽減できます。
危険予知訓練は荷役だけに限らず、会社全体で取り組むべき安全対策としても有効です。交通状況を想定したイラストシートを全従業員に配布して危険予知訓練を行うなど、通勤時の安全対策にもつなげられます。
荷役作業の安全対策として、自動搬送ロボットを導入するのも1つの方法です。狭くて人が多い場所、運搬しにくい荷物など、自動搬送ロボットに荷役作業を任せることで荷役災害を回避できます。
自動搬送ロボットには、フォークリフトタイプや台車タイプなどさまざまなタイプがありますので、リスクのともなう状況に応じて検討してみるといいでしょう。
荷役は入庫から出庫までの作業に携わり、物流業界において重要な存在です。しかし、専門的な運搬機械を使用することもあり、荷役災害のリスクがともなうことも忘れてはいけません。
プラスオートメーションでは、荷役作業の自動化に関するご相談もお受けしています。人手不足や荷役災害対策に悩む業者様や、ご不明な点や心配ごとがありましたら、お気軽に以下のご相談フォームよりお問い合わせください。