2024年問題への対応 バース予約システムを活用したトラック待機時間の削減
トラックが物流倉庫で荷物の積み下ろしを行う際に、長い待機時間(1回の運行あたりで平均1時間45分とされています)が発生することは、以前から大きな課題とされています。この課題を解消するソリューションである、バース予約システムの活用について紹介します。
物流の2024年問題とは、トラックドライバーの時間外労働時間に年間960時間(1日あたりですと大体4時間くらい)までの上限規制が適用されることにより、個々のドライバーの労働時間が減って、社会全体で荷物の輸送能力が減少してしまうことを指します。
2024年問題は、直接は輸配送業務に関係するものですが、輸配送と連携する物流倉庫側にも、この問題に対処しその影響を軽減するために、様々な取り組みが必要になります。
今回はその内、トラックが倉庫のトラックバースで荷物の積み下ろしをする際の待機時間を削減するソリューションである、バース予約システムについて考察します。
トラックの待機時間もトラックドライバーの労働時間に含まれるため、この時間を削減することは、2024年問題への直接的な対応と言えます。
1. バース予約システムとは
バース予約システムの機能
バースの予約管理
バース予約システムの根幹となる機能です。次のような流れで利用されます。
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(出典:国土交通省「「トラック予約受付システム」の導入事例」)
アナログな業務でも同様の考え方では運用されているはずですが、トラックの着車や荷物に関する情報が統合的には管理されておらず、倉庫側と運送業者側で共有されてもいないため、同じ時間帯にバースのキャパを超えるトラックが集中してしまい、結果としてトラックの待機時間を発生させてしまう状況に陥りがちです。
全日本トラック協会の調べによると、ドライバーの手待ち時間は1回の運行あたりで平均1時間45分もあるとされています。通常の労働時間を8時間とすると、その20%以上が待ち時間ということになります。バース予約システムはこの状況を軽減するためのDXソリューションです。
実績データの管理と分析、業務改善への活用
(出典:monoful「トラック簿」)
トラックの受付や入退場の時刻、積み下ろし作業に要した時間が、実績データとしてシステムに蓄積されます。このデータを分析することで、トラックの待機時間をより削減する、倉庫側の作業をより効率的にする、といった業務改善につなげることができます。
代表的なバース予約システム
バース予約システムのソリューションとして、数十種類がリリースされています。代表的なものをいくつか挙げます。
バース予約システムの利用にかかる費用
多くのバース予約システムはSaaS形式で提供されており、月額の利用料金が設定されています。バース予約をはじめフル機能を利用できるプランでも月額10万円までくらいに設定されていることが多いようで、機能を絞ればより安価もしくは無料のプランもあります。例えばmonofulが提供する「トラック簿」は、無料プランもある、下図のような料金体系になっています。
(出典:monoful「トラック受付/予約サービス『トラック簿』」)
バース予約システムの普及状況
(出典:株式会社矢野経済研究所「倉庫内の物流テック市場に関する調査を実施(2022年)」)
矢野経済研究所によると、2023年までに2,000の拠点にバース予約システムが導入されると予測されています(2022年10月時点)。2024年には2,500拠点と、その普及スピードはそれまでと大差ない予測とされていますが、2024年問題の影響が本格化する、まさに本番というタイミングですので、ここから普及のスピードが速まる可能性もあるのではないかと思います。
2. 物流革新に向けた政策パッケージ
何も対策を講じなければ、2024年度には14%、2030年度には34%の
輸送力不足の可能性
冒頭でも述べた通り「2024年問題」は時間外労働の上限規制に準拠した労務管理に物流事業者が努めれば良いという問題ではありません。
物流業界の抱える人手不足や労働生産性の低さは構造的な課題であり、物流事業者はもちろん荷主や一般消費者も協力して取り組むべき社会問題です。
(出典:日本トラック協会 「知っていますか?物流の2024年問題」)
内閣府の「物流革新に向けた政策パッケージ」
政府も省庁の枠を超えた課題との認識しており、内閣府より「物流革新に向けた政策パッケージ」が出されました。
荷主企業、物流事業者(運送・倉庫等)、一般消費者が協力して我が国の物流を支えるための環境整備に向けて、以下について抜本的・総合的な対策を「政策パッケージ」として策定しています。
(1)商慣行の見直し、 (2)物流の効率化、 (3)荷主・消費者の行動変容について |
3.「物流DX」 -トラック輸送・荷役作業等の効率化
上記「政策パッケージ」においても「(2)物流の効率化」内「(3)「物流DX」の推進」としても「物流DX」が具体的施策の一つとして挙げられています。
WMSだけでない様々な情報システム
これまで物流業における効率化といえば、倉庫管理システム(WMS※1)の話題が圧倒的でした。近年は自動倉庫やRFIDなどIoTが脚光を浴びています。アマゾンの自動搬送ロボットの話題を一度は聞いたことがあるかと思います。
さらに、輸配送管理システム(TMS※2)やバース予約システムなど「2024年問題」を契機に様々な情報システムへの注目がベンダー、ユーザー(物流事業者)の双方でかつてないほど高まっています。
※1)Warehouse Management Systemの略
※2)Transport Management Systemの略
「物流DX」を推進するシステム
輸配送管理システム(TMS)はもちろん、クラウド技術を取り入れたデジタコやドライブレコーダーやスマートフォンを活用した車両動態管理システムなど新たな製品やサービスが展開されています。
・輸配送管理システム(TMS) ・バース予約システム(トラック予約受付システム) ・クラウド型デジタコ ・車両動態管理システム(車両動態管理機能) ・クラウド型勤怠管理システム ・IT点呼システム |
理解を得やすい環境への変化
バース予約システムの導入のハードルとなっていたのが、システムを導入する倉庫に入構する大多数のトラックが、このシステムを利用する必要があるという点でした。
運送事業者が孫請け等の多層構造になっている場合、末端のドライバーにルールを周知させるのは容易ではありません。また、予約時間を守らないドライバーが多いとシステムの効果は低減します。そもそも、倉庫の入口に連なるトラックの列が年末の風物詩として看過されるような風潮の中ではシステムの必要性を理解してもらうのも大変でした。
各省庁や政府のPRを始め、社会問題として日本全体で認知が高まる中、以前より各段に関係者の理解が得られやすい環境になったといえます。
4. まとめ
「2024年問題」は個人や一企業だけでは乗り越えることの難しい社会課題です。
正にDXが意図する変革が必要ということです。これまでの意識を超えて、新たな取り組みにトライする契機なのではないでしょうか。
そのために大事なのが情報収集です。本記事がその端緒になれば幸いです。
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仕分けや出荷作業の生産性を高め、ミスの軽減につながります。省人化や省力化が課題になっている物流事業者は、ぜひご検討ください。