2024年問題の影響 -WMSだけでない様々な情報システムへの注目

物流の2024年問題とはドライバーの労働時間規制によって輸送能力が不足し「モノが運べない」可能性の懸念です。解決には物流の効率を物流DXによって向上させることが必要です。物流DXの実現に向け様々な情報システムが注目されています。

2024年(令和6年)4月より、トラックドライバーには年960時間の時間外労働上限規制と改正改善基準告示*が適用されます。これにより、トラックドライバーの労働時間が短くなることで輸送能力が不足し「モノが運べない」可能性が懸念されています。

ドライバーの労働時間等の規制によって生じる様々な影響は、「物流の2024年問題」といわれています(以降、「2024年問題」と記載)。何も対策が行われなかった場合には2024年度には営業用トラックの輸送能力の約14%(4億トン相当)が不足するとの試算もあります。 

*「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」
(改善基準告示)https://jta.or.jp/pdf/kaizen/h00.pdf


1. 2024年問題への社会の反応 

労働や運輸の所管省庁である厚労省及び国交省、そして業界団体である日本トラック協会が問題への理解やその対応積極的にアピールしています。 

厚生労働省 -働き方改革による長時間労働の是正 

 2024年問題の発端である長時間労働の是正、「働き方改革」の主管は厚生労働省です。

 

⇒「働き方改革」の定義 

厚労省の2019年に発表した「働き方改革」の定義は 「投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作るため、働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指す。」 とされています。 

この背景には、日本の労働力人口の減少があります。労働力不足解消のための以下への取り組みが「働き方改革」です。 

  • 働き手を増やす(女性や高齢者の労働市場参加促進) 
  • 出生率の上昇 
  • 労働生産性の向上 

⇒働き方改革関連法 
 2024年適用の改善基準告示もこの「働き方改革関連法」の一部です。時間外労働の上限規制      は2019年(中小企業2020年)4月1日から順次施行されている法律の一部です。 

 

「働き方改革関連法」の概要 
https://jsite.mhlw.go.jp/aichi-roudoukyoku/jirei_toukei/koyou_kintou/hatarakikata/newpage_01128.html 


働き方改革関連法案施行スケジュール
(画像引用:厚労省 「働き方改革関連法」の概要) 
 

「時間外労働の上限規制」のトラックドライバーへの適用は5年の猶予期間が与えられていました。建設業、医師、そしてトラック・バス・タクシードライバーは適用猶予業種として2024年4月から時間外労働の上限規制が適用されます。法令成立時これら業種の実情が法令の定める基準との乖離があまりにも大きいと判断されたためです。 
さらには、時間外労働の上限についても、一般則は年720時間なのに対してトラックドライバーは年960時間と譲歩されています。 

⇒2024年問題への厚労省の取り組み  
  現状と基準の乖離は未だに小さくなく、厚労省もPRに努めています。
 トラックドライバーを雇用している運送事業者だけでなく、荷主や受取人への理解・協力を
 促そうとしています。
 

適用猶予業種の時間外労働の上限規制 
特設サイト 
https://hatarakikatasusume.mhlw.go.jp/ 

国土交通省 -物流の効率化や生産性向上 


運輸を所管する国土交通省も、2024年に向けて、物流の効率化や生産性向上に向けての取組への、物流事業者だけでなく荷主企業や納品先企業等の物流の利用者が相互理解を促す活動を行っています。 

ホワイト物流推進運動 https://white-logistics-movement.jp/ 

公益社団法人全日本トラック協会 

業界団体である、公益社団法人全日本トラック協会においても、特設ページを設けるなど2024年問題へ向けたPRを積極的に行っています。 

・2024年問題(働き方改革)
特設ページ 
https://jta.or.jp/member/rodo/hatarakikata_tokusetsu.html

・物流の2024年問題 
特設ページ 
https://jta.or.jp/member/rodo/logi2024tokusetsu.html

ガイドライン 

全日本トラック協会は問題の改善のため「荷主と運送事業者の協力による取引環境と長時間労働の改善に向けたガイドライン」を策定しています。 
ガイドラインには改善に向けた様々な取り組みが事例と共に紹介されています。 

 

・荷待ち時間の削減を目的とした、予約受付システムの導入や高速道路の利用を見込んだ配車計画づくり 
・荷役に時間の削減を目的とした、荷主に理解を得た上でのパレット荷役への移行 
・輸配送時の交通渋滞の影響を軽減するために、荷主の協力のもと出荷時刻の前倒し 
 

荷主と運送事業者の協力による取引環境と長時間労働の改善に向けたガイドライン
https://jta.or.jp/wp-content/themes/jta_theme/pdf/guideline.pdf 

事例集 https://jta.or.jp/wp-content/themes/jta_theme/pdf/guideline_jirei.pdf 

 

2. 物流革新に向けた政策パッケージ 

 何も対策を講じなければ、2024年度には14%、2030年度には34%の
 輸送力不足の可能性 

冒頭でも述べた通り「2024年問題」は時間外労働の上限規制に準拠した労務管理に物流事業者が努めれば良いという問題ではありません。

物流業界の抱える人手不足や労働生産性の低さは構造的な課題であり、物流事業者はもちろん荷主や一般消費者も協力して取り組むべき社会問題です。 

 

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(画像引用:日本トラック協会 知っていますか?物流の2024年問題)
https://jta.or.jp/logistics2024-lp/ 

内閣府の「物流革新に向けた政策パッケージ」 

政府も省庁の枠を超えた課題との認識しており、内閣府より「物流革新に向けた政策パッケージ」が出されました。 

物流革新に向けた政策パッケージ https://jta.or.jp/pdf/member/policy_package.pdf 
 

荷主企業、物流事業者(運送・倉庫等)、一般消費者が協力して我が国の物流を支えるための環境整備に向けて、以下について抜本的・総合的な対策を「政策パッケージ」として策定しています。 

  1. 商慣行の見直し
  2. 物流の効率化
  3. 荷主・消費者の行動変容について 

 

​3.「物流DX」 -トラック輸送・荷役作業等の効率化 

上記「政策パッケージ」においても「(2)物流の効率化」内「③「物流DX」の推進」としても「物流DX」が具体的施策の一つとして挙げられています。 

WMSだけでない様々な情報システム 

これまで物流業における効率化といえば、倉庫管理システム(WMS*)の話題が圧倒的でした。近年は自動倉庫やRFIDなどIoTが脚光を浴びています。
アマゾンの自動搬送ロボットの話題を一度は聞いたことがあるかと思います。
 

さらに、輸配送管理システム(TMS)やバース予約システムなど「2024年問題」を契機に様々な情報システムへの注目がベンダー、ユーザー(物流事業者)の双方でかつてないほど高まっています。 

*Warehouse Management Systemの略 

「物流DX」を推進するシステム 

輸配送管理システム(TMS*)はもちろん、クラウド技術を取り入れたデジタコやドライブレコーダーやスマートフォンを活用した車両動態管理システムなど新たな製品やサービスが展開されています。 

  • 輸配送管理システム(TMS) 
  • トラック予約受付システム(バース予約システム) 
  • クラウド型デジタコ 
  • 車両動態管理システム(車両動態管理機能) 
  • クラウド型勤怠管理システム 
  • IT点呼システム 

*Transport Management Systemの略 

理解を得やすい環境への変化 


バース予約システムの導入のハードルとなっていたのが、システムを導入する倉庫に入構する大多数のトラックが、このシステムを利用する必要があるという点でした。

運送事業者が孫請け等の多層構造になっている場合、末端のドライバーにルールを周知させるのは容易ではありません。
また、予約時間を守らないドライバーが多いとシステムの効果は低減します。
そもそも、倉庫の入口に連なるトラックの列が年末の風物詩として看過されるような風潮の中ではシステムの必要性を理解してもらうのも大変でした。
 
 
各省庁や政府のPRを始め、社会問題として日本全体で認知が高まる中、以前より各段に関係者の理解が得られやすい環境になったといえます。

 

4. まとめ 

「2024年問題」は個人や一企業だけでは乗り越えることの難しい社会課題です。
正にDXが意図する変革が必要ということです。これまでの意識を超えて、新たな取り組みにトライ
する契機なのではないでしょうか
そのために
大事なのが情報収集です。本記事がその端緒になれば幸いです。
 

 

 

 

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