​​​​働き方改革で物流に科される罰則|2024年問題に直結する現状と必要な取り組みを紹介​

本記事では、罰則について詳しく解説するとともに、実際にどのような違反が生じているのかを紹介します。物流事業者が罰則を受けないための対策もまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。

20194月から、働き方改革を進めるための法改正が段階的に進んでいます。 

 物流業界が大きく影響するのは、20244月にドライバー(自動車運転業務)を対象に施行される時間外労働の上限規制。上限を守れなかった場合、企業に罰則を課されるため注意が必要です。 

 本記事では、罰則について詳しく解説するとともに、実際にどのような違反が生じているのかを紹介します。物流事業者が罰則を受けないための対策もまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。 

 

1. 物流業界における2024年問題の概要 

物流業界の「2024年問題」は、20244月に施行される「時間外労働の上限規制」によって生じる諸問題のことです。ドライバーの労働時間が年間960時間に制限され、以下のような影響を及ぼす可能性があります。 

  • 必要なものが運べなくなる 
  • ドライバーの収入が減少する 
  • 物流企業の売上と利益が減少する 

物流事業者だけでなく、荷主や消費者が受ける影響も少なくありません。 

ただでさえドライバーは低賃金・長時間労働で過酷なイメージが強く、人手不足が深刻化している状態です。いくら残業時間が制限されても、さらに収入が減少すれば、離職者が増える恐れがあります。 

 ドライバーの定着率を高めるためには、労働環境の早急な改善が必要です。 

なお、厚生労働省大阪労働局が2022年に行った調査によると、運輸交通業の中小企業のうち、時間外労働の上限規制について内容を理解できているのは全体の65.4。罰則が関わってくる法令ではあるものの、あまり危機感を感じられない結果です。
(参考:
厚生労働省大阪労働局/働き方改革関連法の認知度と働き方改革への取組状況を調査した結果 

本記事で罰則の詳細や法令違反の現状を知り、理解を深めていきましょう。 

関連記事:物流の2024年問題とは?概要と4つの課題をわかりやすく解説

 

2. 時間外労働の上限規制に違反した場合の罰則 

 

時間外労働の上限規制に違反すると6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰⾦」が科される可能性があります。罰則の対象となるのは企業です。 

 

よほど悪質でない限り6ヶ月以下の懲役にはならないとされていますが、事案の重大性によって判断されます。 

 

罰金に関しては、法令上は1人あたりに罰金を科すことが可能です。労働者が無断で過重労働をしていたことが発覚した場合も、企業が責任をとらなければなりません。 

 

なお、時間外労働の上限規制以外にも、働き方改革で罰則の対象となる法改正があります。 

 

20234月に中小企業を対象に施行された、月60時間超の時間外労働の割増賃金率の引き上げ(25→50%)でも、「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰⾦」が科されます。年5日の年次有給休暇の取得義務付けでは「30万円以下の罰金」です。 

 

いずれも物流事業者がきちんと内容を理解し、労働者に周知しなければなりません。 

 

​3.物流業界が関わる監督指導や送検等の状況 

こちらでは、厚生労働省が令和3年に公開した資料をもとに、監督指導や送検等の現状を紹介します。

(1) 監督指導を受けた8割以上の事業場が労働基準関係法令違反に該当 

令和3年のデータによると、監督指導を実施した3,037のトラック事業場のうち、労働基準関連法令違反が認められたのは2,465事業場。全体の81.2%にあたります。
(参考:
厚生労働省/自動車運転者を使用する事業場に対する監督指導、送検等の状況 

 

監督指導とは、労働基準監督官が労働基準法や労働安全衛生法などの法律に基づき、労働条件について調査を行うことです。定期的に、あるいは働く人からの情報によって事業場に立ち入るなどをし、機械や設備、帳簿などを検査します。
(参考:
厚生労働省/労働基準監督官の仕事 

 

また、改善基準告示違反が認められたのは1,754事業場で全体の57.820244月からトラック運転者の改善基準告示が改正されるため、新しい基準に沿った対策が必要です。
(参考:
厚生労働省/トラック運転者の労働時間等の改善基準ポイント 

(2) 労働基準関係法令違反事項の4割以上は労働時間 

労働基準関連法違反に該当する2,465事業場のうち、トラック運転者の主な違反事項の割合は以下のとおりです。
(参考:
厚生労働省/自動車運転者を使用する事業場に対する監督指導、送検等の状況 

 

労働時間 

47.5 

割増賃金の支払 

19.9 

時間把握 

7.0 

 

労働時間の違反が全体の約半数に及んでいます。働き方改革の時間外労働の上限規制に該当する、長時間労働が原因です。 

また、労働時間を正確に把握していないことにより、割増賃金の支払い不足が発覚するケースも少なくありません。 

(3) ドライバーの拘束時間が改善されない現状 

改善基準告示違反に該当する1,754事業場のうち、トラック運転者の主な違反事項の割合は以下のとおりです。
(参考:
厚生労働省/自動車運転者を使用する事業場に対する監督指導、送検等の状況 

 

最大拘束時間 

43.3 

総拘束時間 

32.4 

休息期間 

31.4 

連続運転時間 

30.0 

最大運転時間 

21.1 

厚生労働省の資料を見る限りでは、令和元年から令和3年の改善基準告示違反事業場数はほぼ横ばい状態です。 

働き方改革における時間外労働の上限規制は、20194月から段階的に施行されています。トラック事業者が該当する自動車運転業務では、すぐに現状を変えることができない事情から5年間の猶予が設けられていました。それでもなかなか改善が難しい状態です。 

(4) 重大で悪質な労働基準関連法令違反が認められたのは32 

重大で悪質な労働基準関係法令違反が認められた事案として、労働基準監督機関がトラック事業者を送検した件数は以下のとおりです。
(参考:
厚生労働省/自動車運転者を使用する事業場に対する監督指導、送検等の状況 

 

令和元年 

38 

令和2 

46 

令和3 

32 

 

令和3年の場合、そのうちの17件が安全基準、10件が労働時間によるものです。なかにはドライバーが追突事故を起こしてから、違法な時間外労働が発覚したケースもあります。 

 

4. 2024年問題で罰則を受けないために物流事業者が取り組むべき5つのこと 

こちらでは、2024年問題で物流事業者が罰則を受けないための対策を紹介します。特にドライバーの労働時間に配慮した取り組みが大切です。 

  1. 労働時間を適正に把握できる仕組みづくり 
  2. 勤務間インターバル制度を考慮した人員調整 
  3. ドライバーの高齢化に対する対策 
  4. ドライバーが担う付帯作業の把握 
  5. IT技術を活用した輸配送効率の向上 

(1) 労働時間を適正に把握できる仕組みづくり 

ドライバーの労働時間が適正に把握できないことにより、物流事業者が罰則を受けるケースは少なくありません。​​動態管理システムや勤怠管理システムの導入などを検討し、正確に労働時間を管理できる体制を整えることが重要です。 

同時に社員教育を行い、働き方改革での労働時間に関わる改正事項を正しく伝えましょう。労働者の勝手な判断で過重労働になったとしても、罰則を科せられるのは企業です。 

(2) 勤務間インターバル制度を考慮した人員調整 

勤務間インターバル制度は、業務終了時刻から次の始業時刻の間に、一定時間以上の休息時間を確保する取り組みです。 

20244月から改正が適用され、休息時間が9時間を下回らないようにする必要があります。事業主は、できる限り11時間以上の休息時間を与えるように努めなければなりません。 

これにより、長距離輸送が難しくなる可能性があります。複数人で運ぶ体制を整えるなど、労働時間を意識した人員調整が必要です。 

場合によっては、モーダルシフトへの切り替えなどで対策するのもよいでしょう。 

(3) ドライバーの高齢化に対する対策 

ドライバーの平均年齢は、全産業(43.4歳)と比較して高齢化が進んでいます。令和3年の調査では、大型トラック運転者の平均年齢は49.9歳、中小型トラック運転者の平均年齢は47.4という結果です。
(参考:
厚生労働省/統計からみるトラック運転者の仕事 

低賃金・長時間労働である労働環境を改善しないと、若い世代がなかなか集まりません。就業規則や賃金形態、福利厚生などの見直しを行い、働きやすい環境を整えることが大切です。 

なお国土交通省は、2024年問題に備えて若手ドライバーの確保に向けたWebサイト「HaKoBu」を開設しました。トラック業界の魅力を発信し、求人情報まで見られるようになっています。 

(4) ドライバーが担う付帯作業の把握 

罰則を受けないためには、荷主と連携して2024年問題に取り組む必要があります。なぜならドライバーの労働時間に関する違反は、荷主による影響も少なくないからです。 

  • 荷待ち 
  • 積み降ろし作業 
  • 仕分け作業 

ドライバーは運転業務以外にも必要な業務が多くあります。どの作業にどれだけの時間がかかっているのかを把握し、無駄な時間を削るために荷主へ協力を求めなければなりません 

荷主の依頼をなかなか断れない状況から、ドライバーが契約外の業務をさせられている場合もあります。事業主がすべて把握することが重要です。 

なお、今後ドライバーの労働時間を制限しただけでは、運べる荷物の量が減ってしまう恐れがあります。運賃の値上げを余儀なくされる可能性もあり、荷主が受ける影響も少なくありません。 

(5) IT技術を活用した輸配送効率の向上 

2024年問題に備えるためには、あらゆる面でIT技術を導入することも検討しましょう。時間の無駄をなくし、正確に労働時間の管理が行える体制を整えることが罰則を回避するポイントです。 

  • トラック予約システム 
  • 勤怠管理システム 
  • 輸配送管理システム

トラックの積載率を高めて、一度に多くの荷物を運べるようにする対策を考えましょう。場合によっては荷主への協力を仰ぎ、納品スケジュールの見直しを行ってもらう必要があります。

 

5. まとめ 

残念ながら2024年問題をはじめ、働き方改革への理解が進んでいない物流事業者も多くあります。「知らなかった」という理由で罰則を回避できるものではありません。 

 2024年問題で会社の売上や利益の減少が懸念されている場合は、倉庫内作業の見直しを行うのも有効です。自動化によって生産性を高めることで、マイナスになる部分をカバーできる可能性があります。 

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仕分けや出荷作業の生産性を高め、ミスの軽減につながります。省人化や省力化が課題になっている物流事業者は、ぜひご検討ください。