【図解】ABC分析で物流の在庫管理を効率化!方法や注意点をわかりやすく解説
ABC分析は、商品の重要度を”見える化”し、在庫管理の最適化に役立つ分析方法です。重要度別に分類することで、力を入れるべき商品が明確になります。そこでこの記事では、ABC分析のやり方を表を用いてわかりやすく解説します。在庫管理における分析時の注意点についてもまとめていますので、ぜひご活用ください。
1. ABC分析とは?概要や在庫管理方法を解説
本章ではABC分析の概要や目的について解説します。在庫管理方法における判断基準も確認しておきましょう。
1-1 ABC分析は商品の重要度を分類し、在庫管理を最適化する手法
ABC分析は、売上などの評価軸をもとに、商品の重要度や優先度を分析する方法です。「重点分析」とも呼ばれ、在庫不足や余剰在庫のリスクを軽減できます。
算出したデータを重要度の高いものからABCのグループで分類し、各グループで管理方法を変え、在庫管理を最適化します。売上や利益の向上にも役立つ手法です。
なお、ABC分析は統計分析で使用される「パレートの法則」と関連深いと言われています。
パレートの法則は「80:20の法則」「ばらつきの法則」とも呼ばれ、”全体の数値の大部分(80%)は、全体を構成するうちの一部(20%)の要素が生み出している”という考え方が特徴です。
身近な例で言うと「上位20%の商品が売上の80%につながっている」「ECサイト全体のうち、20%のページにアクセス数の80%が集中している」と置き換えられます。
このような法則に基づいて適切にグループ分けできれば、在庫管理の効率化につながるのです。
1-2 ABC分析から判断する重要度と在庫管理方法
ABC分析によって分類されたグループは、以下のような基準で在庫管理を行いましょう。
Aグループ |
売上貢献度が高く、優先的に在庫管理を行う商品。欠品させないようにすることが大切。 |
Bグループ | 売上貢献度が中程度の商品。現状維持でなるべく欠品しないように心がける。 |
Cグループ | 売上はあるが、全体に占める割合が低い商品。在庫切れになってから発注する、もしくは商品の入れ替えを検討する必要がある。 |
データに基づいて分類することで、注力すべき商品が明確になります。特にAグループに分類された商品は、重要度・優先度が高い商品です。
2. ABC分析のやり方を6ステップでわかりやすく解説
ABC分析のやり方を、エクセルを用いてわかりやすく解説します。
- エクセルに必要なデータを収集する
- 売上金額の大きい順に並べ替える
- 累計売上を計算する
- 累計売上構成比を計算する
- ABCのグループ分けをする
- パレート図の作成
在庫管理におけるABC分析では、売上への貢献度を求めるために売上金額をもとに算出されることが多いです。そのため、今回は売上金額をもとにデータを分析しています。
なお、ABC分析の評価軸は、販売金額・販売数量・出荷数など、目的に応じて使用するデータを使い分けましょう。
2-1 エクセルに必要なデータを収集する
ABC分析を行うデータを集め、エクセルにまとめましょう。今回の分析では「商品名・単価・出荷数・売上」を用いていますが、販売数量などを基準とする方法もあります。
なお、在庫管理システムにはデータ抽出機能が備わっていることが多いです。必要なデータを簡単に収集できるので、ぜひ活用しましょう。
2-2 売上金額の大きい順に並べ替える
データを収集したら、売上金額の大きい順に並べ替えます。売上列のセルをクリックし、エクセルにある並べ替え機能で降順を選択しましょう。
2-3 累計売上を計算する
売上を上から順に1行ずつ足し、累計売上を計算します。
2-4 累計売上構成比を計算する
累計売上構成比の計算式は「累計売上÷累計売上合計」です。例えばFの累計売上構成比を求める場合、「71,250円÷262,750円×100 = 27.12%」となります。
累計売上合計(262,750円)は固定値です。エクセルで計算式を入れる際に注意しましょう。
2-5 ABCのグループ分けをする
累計売上構成比を算出したら、ABCのグループ分けを行います。今回は以下の基準でグループ分けをしました。
- Aグループ:累計売上構成比が70%未満商品
- Bグループ:累計売上構成比が70%~90%未満の商品
- Cグループ:累計売上構成比が90%以上の商品
必ずしもパレートの法則通りに8:2にする必要はありません。Dグループ・Eグループなど、さらに細かく分類することも可能です。取り扱う商品の性質や倉庫の状況によって、適した基準が異なります。
2-6 パレート図の作成
ABCのグループ分けをした時点で商品の重要度・優先度は明確になりますが、可視化することでさらにイメージしやすくなります。棒グラフと折れ線グラフを用いたパレート図を作成しましょう。
数値で見るよりも各商品の状況を判断しやすくなり、Aグループに分類された商品が売上に大きく貢献していることが分かります。
今回は在庫管理におけるABC分析を行いましたが、在庫数・在庫金額に置き換えれば余剰在庫の削減につながる分析が可能です。
3. 在庫管理におけるABC分析の注意点4つ
ABC分析は在庫管理において有効な方法ですが、考慮しなければいけない注意点が4つあります。
- トレンドやセール商品の分析結果を分ける
- 季節商品や新商品の動向に注意する
- 商品の関連性を考慮する
- ロングテール理論を考慮する
きちんと理解できていないと間違った判断につながる可能性があるため、物流事業者は見落とさないように注意しましょう。
3-1 トレンドやセール商品の分析結果を分ける
トレンドやセール商品のように、一定期間で爆発的に売れる商品は、一時的に売上が大きくなります。定番商品と同じ条件で分析するのは危険です。
例えばメディアに特集されたなどの理由で、商品が一定期間で多く売れることもあります。そのタイミングでABC分析をしてAグループに分類された場合、数値だけを見て在庫管理を行うと余剰在庫につながってしまうので注意しましょう。
3-2 季節商品や新商品の動向に注意する
季節商品や新商品の場合、分析時にCグループに分類されたとしても、今後需要が高まる可能性があります。欠品しないように、動向をチェックしましょう。
なかには、メーカーがプロモーションに力を入れている商品があるかもしれません。そういった動きに目を向けることも大切です。
3-3 商品の関連性を考慮する
Cグループに該当する場合でも、Aグループと関連性が深いものは注意して見極める必要があります。
例えばキャラクターグッズを販売している場合、豊富なラインナップを見ることが楽しみでお店を訪れる人も多くいるでしょう。ABC分析でCグループに分類された商品の取り扱いを辞めてしまえば、「商品数が減ってしまった」という理由で来なくなる人がいるかもしれません。
売上全体に占める割合が小さくても、付属品や関連商品は重要度が高い可能性があります。
3-4 ロングテール理論を考慮する
ロングテール理論とは、売れ筋商品の売上よりも、販売機会の少ない商品の売上総額のほうが大きくなる現象を指します。流行や季節に左右されず、売上高が低くても一定の販売数をキープできるのが特徴です。
ECサイトの場合、あえて販売機会の少ない商品を幅広く取り揃えることで差別化を図る企業もあります。実店舗よりも在庫管理コストが抑えられるため、少ない在庫を抱えていることがあまり負担にならない点がメリットです。また、Cグループに分類されるような商品の取り扱いを増やし、インターネット検索でヒットさせるのも有効な戦略となります。対象となる顧客の総数を増やすことで、多品種少量販売で売上げを大きくする目的です。
ABC分析を行う際は、販売戦略や目標を明確に定めておきましょう。
4. まとめ
ABC分析は、在庫管理の最適化において有効な方法です。商品の重要度を可視化することで、力を入れるべき優先度が明確になります。
この記事のやり方を参考に、課題となるデータを抽出し、実際に分析してみましょう。その際、Cグループだからという理由で安易に判断せず、今後の動向や関連性などを考慮することが大切です。
なおABC分析を定期的な在庫管理の指標に取り入れていく場合、商品の売上や累計販売数などを常にデータとして所持しておくことで、スムーズに進められます。
売上の管理をシステム化していない場合は、WMS(在庫管理システム)の導入がおすすめです。
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