【後編】「協創」は、課題だらけの物流ビジネスを救う(国際物流総合展2022 視察レポート)
2022年9月13日(火)から16日(金)の4日間、東京ビッグサイトにて国際総合物流展2022が開催された。来場登録者数60,547名というが、SNSを見ていると、3日間訪問した筆者のように、複数日訪問した人も少なからずいたようだ。 なにしろ、きちんと見て、しっかりと学びを得ようと思ったら、とても一日で回れる規模の展示会ではなかった。名実ともに、物流単体の展示会としては、国内最大であろう。
注目を集めるt-Sort 3D
GLPブース内でも、+Automationおよびt-Sortが展示された。
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トヨタL&Fブースでは、t-Sort 3Dが展示され、注目を集めた。
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トヨタL&Fは、国際物流総合展の常連である。
かつてのトヨタL&Fブースと言えば、同社社員が華麗にフォークリフトを操り、デモンストレーションを行うのが通例であった。だが今回、トヨタL&Fが前面に押し出してきたのは、自動フォークリフトだった。
トヨタL&Fに限らず、今回の国際物流総合展2022では、自動フォークリフトの出展が多く、衆目も集めていたように感じた。誤解を恐れずに言えば、自動フォークリフトは倉庫業務において、分かりやすい自動化の例だからだ。
一方で、トヨタL&Fのブースに立ち寄る人たちが、同じように熱い視線を注いでいたのが、t-Sort 3Dだった。
なぜ、注目を集めていたのか?
理由はいくつかあるだろうが、筆者は、物流改善・物流改革を求める人たちにとって、自動フォークリフトなどトヨタL&Fの扱うソリューションとt-Sort 3Dの組み合わせが、「現実的な解答」になりうるからではないかと考えている。
YE Digitalブースでは、Mujin社のAGV、t-Sort、東芝テック社のRFID読み取りゲートがWES(Warehouse Execution System 倉庫運用管理システム)によって統合管理されるデモンストレーションが展示された。
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YE Digitalブースでは、貨物がMujin社のAGVからt-Sortへ引き渡され、東芝テック社のRFID読み取りゲートを通過し検品される様子がデモンストレーションされていた。
これから自動化、無人化が発展普及していくにつれて、複数の物流ロボットやマテハンが、共存してひとつの自動倉庫・無人倉庫を構成していく流れが広がっていくのは間違いがない。
その理由もやはり「現実的な解答」にあると考えている。
物流危機に対する「現実的な解答」を導くため、必要とされる「協創」
YE Digital、ロジザードのブースでは、それぞれ+Automationのミニセミナーを開催した。
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物流業界にこぞって人が集まり、人手不足が解消する未来が来ると、本気で期待している物流関係者はいないだろう。
少子高齢化により労働人口が減っていく日本において、今や労働力不足は産業界全体の課題である。他の人気産業を押しのけて物流業界に人が集まり、そして人手不足が解消することなど、残念ながらあるわけがない。
だからこそ、自動化・無人化を実現する物流ロボットや自動倉庫などが、今まで以上に注目を集めているのだ。
自動フォークリフトが注目を集めているのは、自動化・無人化の手段として分かりやすいからである。フォークマンによるフォークリフト作業を、自動フォークリフトが完全に代替できれば、大幅に人員を削減できる...可能性がある。
奥歯にモノが挟まったような言い方をしたのは、現場をよく知っている人であればあるほど、自動フォークリフトが抱える致命的な課題に囚われてしまうからだ。
「遅いよね...」──トヨタL&Fのデモンストレーションを見る筆者の隣でつぶやいた男性のネームプレートには、中堅どころの倉庫会社の名刺があった。自動フォークリフトは、動きの正確さなどは驚くほどに進化しているが、熟練したフォークマンが操るフォークリフトと比べると、未だに圧倒的に遅く、もどかしいほどに時間が掛かる。
自動化を行う上で、生産性が下がることは大原則として許されない。作業に時間が掛かる(単時間あたりの生産性が落ちる)のであれば、稼働時間を増やすしかない。増やすしかないのだが、稼働時間を延長した結果、その前後作業を請け負う倉庫作業員が残業をする羽目になるのは本末転倒である。
そう考えると、自動フォークリフトを導入すると同時に、その前後工程も工夫しなければならない。工夫にはいろいろな方法が考えられるが、分かりやすいのは前後工程も自動化することである。
t-Sortは、自動フォークリフトの前後工程を自動化・最適化するソリューションとして、具合が良いのだ。
実際にt-Sortを導入している3PL企業 の知己と、国際物流総合展2022会場でばったり遭遇した。その彼が興味深いことを言っていた。
「t-Sortね、いいんだよ。使い勝手もいいしね。でもその良さをしっかりと活かしきるためには、自動フォークリフトやら、マテハン機器、他の物流ロボットなんかとマージして、全体最適化を実現する必要があるんだ」
この考え方は、t-Sortだけに限ったものではなく、すべての物流ロボット、マテハン、自動倉庫、あるいは物流ソリューションベンダーに対しても通じるものだ。
ひとつの企業が提供できるソリューションには限界がある。
さらに言えば、多種多様なニーズが存在する物流業界において、ひとつの企業の価値観や知見だけで最適解を導くのは難しいケースもある。
だから、それぞれ得意分野を持った企業が、それぞれ得意とするソリューションや知見を持ち寄り、より大きな価値を顧客に提供すること──すなわち「協創」が求められているのだ。
現在の物流ビジネスは、多くの、そして重たい課題を抱えている。
人手不足、物流コストインフレ、慢性的な赤字体質、常態的な長時間労働など、物流ビジネスが抱える膿を出し切るのは、とてつもない難関だ。
以前、筆者が書いた記事に対し、「物流なんてオワコン(※終わったコンテンツの略)なんだからさ、もう何をしても無理無理!」というコメントが付いたことがあった。言葉や表現は乱暴だが、物流ビジネスが置かれた深刻な状況を考えると、このコメントを無下に看過することもできない。
国際物流総合展2022の各所で見受けられた「協創」の種は、この深刻な状況を吹き飛ばす希望ではないか?
大げさに思われるかもしれないが、そんな期待をしてしまった。
筆者にとって、国際物流総合展2022は、これまででもっとも知的好奇心をくすぐられるものであった。
その理由のひとつは間違いなく「協創」の種にある。
ロジザードブースで、t-Sortの説明を求める来場者。この中には、WMSとt-Sortが不可分な存在であることを分かっている人も少なくないだろう。
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