【重要】人力による重量物運搬は何キロまで?制限や安全に運ぶポイントを解説

人の力で持ち上げる荷物の重さには、法律で定められた制限があります。重量物を取り扱う物流事業者様の中には、「何キロまで人力で運搬していいのか」をあまり周知できていない場所もあるのではないでしょうか?

制限を超える重量物の運搬は、労働災害につながるリスクがあります。また制限の範囲内であっても、運搬する姿勢が良くないと腰などを痛める可能性があるため、注意が必要です。

そこでこの記事では、人力による重量物の取り扱い制限や、安全に運搬するためのポイントについて詳しく解説します。物流倉庫で運搬を効率化する方法についてもまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。

 

1. 人力による重量物の取り扱いは法律で制限されている

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人力による重量物の取り扱いは、以下の法律によって制限されています。

  • 労働基準法(労基法)
  • 女性労働基準規則(女性則)
  • 年少者労働基準規則(年少則)

16歳未満・18歳未満・女性などの基準によって制限される重さが異なるため、法律で許可されている範囲やルールを理解しておきましょう。

(1) 人力による運搬は何キロまで?男女別に解説

人力によって運搬できる重さを男女別に解説します。断続作業か継続作業かによっても制限が異なりますのでご注意ください。

  • 断続作業:必要なときに行う積み降ろし作業
  • 継続作業:荷物の仕分けなど、継続的に行う作業

あくまでも法令での制限であって、作業の継続時間や健康状態によって各自判断が必要です。

 

男性

  断続作業 継続作業
満16歳未満 15kg 10kg

満16歳以上

満18歳未満

30kg 20kg
満18歳以上 定めなし 定めなし

(参考:厚生労働省/年少者労働基準規則

満18歳以上の男性は、法令上、明確な制限がありません。厚生労働省が発行する「職場における腰痛予防対策指針」では、満18歳以上の男性の制限について「体重のおおむね40%以下」に努めるように明記されています。

なお、以前は「満18歳以上は55kgまでの重量物」と制限されていました。しかし腰痛疾患の増加などが原因となり、平成25年に法律の改訂が行われ、廃止されています。

今でも古い基準で作成された資料が会社やインターネット上に残っているため、物流事業者は誤った情報を伝えないようにすることが重要です。

 

女性

  断続作業 継続作業
満16歳未満 12kg 8kg

満16歳以上

満18歳未満

25kg 15kg
満18歳以上 30kg 20kg

(参考:厚生労働省/女性労働基準規則

女性の場合、妊娠中及び産後1年の重量物運搬は禁止です。満18歳以上の女性については、「男性が取り扱う重量の60%程度」に留めることが義務付けられています。(参考:厚生労働省/職場における腰痛予防対策指針及び解説

この基準は、一般的に女性の持ち上げ能力は男性の60%くらいであるという理由からです。つまり、体重60kgの女性の場合は「60kg×40%×60%=14.4kg」といった計算式になり、人力による運搬の上限は14.4kgとなります。

(2) 制限を超える重量物の取り扱いは2人以上で行う

制限を超える重量物を取り扱う場合は、必ず2人以上で行うことが「職場における腰痛予防対策指針及び解説」で定められています。重量物は荷物だけでなく、資材や機器など、倉庫内にあるものすべてが対象となるのでご注意ください。

また、2人以上で運搬する際は、「適切な姿勢で、可能な範囲で身長差を考慮した労働者を組み合わせる」ように明記されています。各労働者にかかる重量が均一になるようにするためには、身長差を考慮した人員配置を行うことが大切です。

なお今回は厚生労働省が発行する「職場における腰痛予防対策指針及び解説」に基づいて解説していますが、医療や介護現場等で人を抱える作業は重量物に含まれていません。こちらに該当する方は別途ご確認ください。

 

2. 人力で安全に重量物を運搬する7つのポイント

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こちらでは「職場における腰痛予防対策指針及び解説」を含めた情報を参考に、人力で安全に重量物を運搬するポイントを7つ紹介します。

  1. 腰部に負担がかからないように持ち上げる
  2. 可能な限り重量を明示する
  3. 適度な間隔で小休止や休息を入れる
  4. 作業環境を整える
  5. 腰部保護ベルトの使用は注意が必要
  6. 作業マニュアルを作成する
  7. 労働安全衛生教育を行う

どれも労働災害を防ぐうえで重要なポイントです。それぞれ詳しく解説します。

(1) 腰部に負担がかからないように持ち上げる

重量物を持ち上げたり押したりする際は、できるだけ荷物に体を近付けるようにしましょう。腰部への負担を少なくするためには、体の位置を荷物の高さに合わせ、重心の移動を小さくすることが大切です。

膝に障害がない方は、片足を少し前に出してしゃがみ、足と膝の力で持ち上げると良いでしょう。

もっとも良くないのは、前屈のような姿勢で背中を丸め、腰を重心にして持ち上げることです。荷物が重いほど腰への負担が強くなり、痛めるリスクが高くなります。

(2) 可能な限り重量を明示する

荷物の中には、実際の重量が外見と大きく異なる場合があるので注意しましょう。可能な限り、見える場所に取り扱う荷物の重量を明示することが望ましい対策です。

自社商品を製造するメーカーであれば、あらかじめ対策しておくことで運送会社や顧客側で安全に荷物を運搬できます。

著しく重心が偏る荷物には、分かりやすい場所にその旨を明示しましょう。荷物がかさばらないように、適切で適量な資材を用いた梱包を心がけることも大切です。

(3) 適度な間隔で小休止や休息を入れる

荷物の重量や運搬する頻度、運搬距離などの負荷に応じて、小休止や休息をとりましょう。天候や気温を考慮した休息も必要です。

人が強い力を発揮できる時間は限られていて、時間とともに筋力は低下します。重量物を運搬する作業者を固定せず、軽作業と組み合わせるなど、継続作業にならないための配慮を行いましょう。

(4) 作業環境を整える

人力での運搬が必要な倉庫は、運搬する距離や高さに無理がないように作業環境を整えましょう。腰痛などが発生するリスクが高いものから、優先的に作業環境を見直すことが大切です。

荷物を上げ下げする距離を短くして体への負担を軽減するためには、適切な高さの作業台や台車を使用しましょう。倉庫の整理整頓を心がけ、動きやすい導線を確保しておくことも重要なポイントです。

また、冷えによって腰などを痛めるリスクが高まります。作業しやすい温度を保ち、冬季や外で作業する場合は、防寒着の支給や室内で体を温める時間を確保するなどの配慮が必要です。

(5) 腰部保護ベルトの使用は注意が必要

腰部保護ベルトの使用は、労働者ごとに効果を判断することが重要とされています。使用することが最善な方法とは限りません。

職場における腰痛予防対策指針及び解説」では、作業している間は効果を感じられていても、腰痛のある人が装着して外した場合に痛みが強まるケースもあると明記されています。

物流事業者は安易に腰部保護ベルトの使用を勧めるのではなく、効果や限界を理解させることが大切です。すでに腰部に痛みがあるなど、作業に対する不安がある場合は、医師への相談を促しましょう。

(6) 作業マニュアルを作成する

重量物の持ち上げ方や下ろし方など、荷物を取り扱う際のマニュアルを作成することも、安全に運搬するうえで重要な対策です。言葉で伝えてもうまく理解できない可能性があるため、写真やイラストなどを取り入れた資料を作成しておくと良いでしょう。

また、一定の高さ以上の荷物は必ず踏み台を使用するなど、倉庫内でルールをつくることも大切です。取り扱う荷物の重さやサイズによって起こりうるリスクを洗い出し、商材に適した取り扱いマニュアルを作成しましょう。

(7) 労働安全衛生教育を行う

労働者を新しく雇ったり作業内容を変更したりした際は、安全衛生教育を実施することが労働安全衛生法によって義務付けられています。業種や職種、事業形態に関わらず、労働災害や職業性疾病を防止するために労働者に対して行う教育です。

人力による重量物の運搬は、教育内容の5番「当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防に関すること」に該当します。(参考:厚生労働省/労働安全衛生関係の免許・資格・技能講習・特別教育など

物流事業者は、労働者に安全衛生教育を行う義務を怠ってはいけません。

 

3. 物流倉庫で重量物の運搬を効率化する5つの方法

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制限されている重量の範囲内だからといって、人力で運搬することが最善な方法ではありません。こちらでは、倉庫内での運搬を効率化する方法を5つ提案します。

  1. 適切な高さの台車を使用する
  2. ハンドリフトを使用する
  3. フォークリフトで運搬する
  4. コンベヤを導入する
  5. ロボットを導入して自動化する

高齢化が進む倉庫ほど、安全に運搬するための対策が必要です。業務効率を向上するうえでも有効な対策となりますので、ぜひご確認ください。

(1) 適切な高さの台車を使用する

倉庫内で台車を使用する際は、適切な高さの台車を使用しましょう。

比較的小型の商品を取り扱う場合は、2段式の台車を使用することで上げ下げする動作を少なくできます。ガラスやサッシなどを取り扱う場合は、板状物の重量物を運搬する専用台車を使用することがおすすめです。

商材に適した台車を使用することで、不安定な運搬による落下など、破損するリスクも抑えられます。

(2) ハンドリフトを使用する

倉庫内で誰でも重量物を効率的に運搬できる手段として、ハンドリフトが有効です。台車よりも一度に多くの商品を運搬できます。

ハンドリフトを使用する場合、使用するパレットによってハンドリフトのツメが入らないものもあります。効率よく荷物を運搬するためには、パレットの見直しも必要です。

(3) フォークリフトで運搬する

重量のある荷物を迅速に効率よく運搬するなら、フォークリフトは欠かせません。倉庫内の狭い通路での運搬が多い場合は、立って運転するリーチタイプのフォークリフトが安全です。

物流倉庫の中には、女性にフォークリフト免許の取得を勧める企業も増えています。倉庫内での短距離運搬が目的です。これにより、トラックへの積み込み作業が中心となる荷役作業者の負担を軽減する効果があります。

(4) コンベヤを導入する

重量物の運搬を効率化する施策として、コンベヤの導入も1つの手段です。多額の導入コストがかかりますが、ある程度規模の大きい倉庫では大幅な効率化が見込めます。

近年ではコンベヤの仕組みを活用したソーターの導入も進み、物流業界だけでなく、空港や製造業などでも利用されています。運搬と仕分け作業の効率化が可能です。

(5) ロボットを導入して自動化する

物流業界では、さまざまなロボットの開発が進んでいます。台車やフォークリフトタイプなどのロボットもあり、用途に合わせた自動化が可能です。

なお物流ロボットには、運搬だけでなく、ピッキングや仕分けなどのサポートを行うタイプもあります。自動化が進むほど労働者にかかる負担が少なくなるため、倉庫の安全対策にもつながる有効な施策です。

 

4. 当社の自動搬送ロボット「JUC-S800R」の紹介

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プラスオートメーションでは、運搬をサポートする自動搬送ロボット「JUC-S800R」を月額サブスクリプションで提供しています。導入コストを抑えて、倉庫を自動化することが可能です。

JUC-S800R自律走行可能なAMRロボットであり、自ら障害物を検知して回避します。柔軟性に優れており、既存のレイアウトを変えずに導入できるのが特徴です。

直接荷物を載せて運搬する台車の役割や、棚やパレットを運搬するフォークリフトの役割をロボット1台で実現します。最大800kgまでの重量物の運搬が可能です。

効率よく、安全に運搬を行う手段としてぜひご検討ください。

 

5. まとめ

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物流事業者は、労働者に人力による重量物の制限を正しく伝え、安全に運搬するための方法を教育することが大切です。制限の範囲内だからといって無理をせず、効率化するための機器やシステムを取り入れましょう。

プラスオートメーションでは、運搬を効率化するための方法などに関するご相談をお受けしています。

  • コストをかけずに効率化したい
  • 人手不足で作業が追いつかない
  • どのような対策が必要か分からない
  • 自動化について詳しく知りたい
  • 物流ロボットの導入効果を知りたい
  • まずは話だけでも聞いてみたい

上記のようなお悩みやご不明な点がございましたら、下記のフォームよりお気軽にお問い合わせください。