【倉庫作業の自動化・省人化】ロボットとマテハンの違いとは
近年のインターネット通販の利用者の急増を受け、慢性的なドライバー不足や物流作業者の不足が顕著になっています。そんな中、コロナ禍の影響も受け、倉庫内の作業者も不足しがちな状況が続いています。自動化・省人化に向けた自動化を検討されている企業様が増えています。
エッセンシャルワーカーとして社会のインフラを支えるより重責を担う状況にありながら、慢性的な人手不足に苦慮されている企業様も多いのではないでしょうか。そんな中、自動化・省人化に向けた自動化を検討されている企業様が増えています。
自動化は、大きく従来からあるマテハン(マテリアル・ハンドリング)機器と新しい自動化手段であるロボットに大別されます。そこで当記事ではとくに、マテハンとロボットのそれぞれについて詳しく解説します。
1.庫内作業の効率化(自動化・省人化)が求められる背景
コロナ禍での人材配置
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で人々は不要不急の外出を控え、ビジネスパーソンはオフィスへの出勤をリモートワークへと切り替えるなどするなかで、人との対面・接触を避けることのできない物流業界。リモートワークのできない現場の作業員の集団感染予防対策のため庫内の密を避けながら、効率的に作業を行うことが求められます。
また、通勤に不便な立地の施設や、深夜や早朝などの時間帯、冷凍・冷蔵庫内作業など過酷な作業内容・労働環境下では、これまで以上に人員の不足が懸念されます。
さらには少子高齢化による生産年齢人口の減少により、物流業に従事する人材の確保はいっそう難しくなっています。
インターネット通販の利用者急増による現場負担の増大
近年のインターネット環境の拡充やスマートフォンの普及、多種多様な業種の参入などにより、インターネット通販の利用者が急増しています。加えて、このたびの新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、いわゆる"巣ごもり需要"が高まり、ネットショッピングはかつてないほど盛況です。
これらのネット通販利用者の急増の結果、物流に大きな負荷がかかっています。とくに倉庫では、小ロット多品種の荷物が増え、さらに翌日配送や当日配送が常態化することで現場への負担は大きくなっています。
以上のことから、自動化・省人化による庫内作業の効率化は緊急の課題となっていると言えるでしょう。
2. 自動化手段:従来型マテハン機器
マテハンとは「マテリアル・ハンドリング(material handling)」の略で、生産拠点や物流拠点内のモノの移動に関する業務全般を指します。そのうち庫内の物流業務を効率化するための専用の荷役機器を「マテハン機器」と呼びます。
主なマテハン機器としては、台車やパレット、フォークリフト、ハンドリフト、ベルトコンベア、ピッキングカート、折りたたみコンテナ、ドーリー、自動倉庫やソーターなどがあります。
台車やパレットはほとんどの物流現場で使われており、多くは人の手により扱われています。ここでは自動化につながる主なマテハン機器を紹介したいと思います。
自動倉庫
「保管」「入庫」「出庫」の作業を自動化します。省人化・自動化以外の目的としては、積載効率を上げるための省スペース化、在庫管理の徹底、等が目的となります。扱う荷姿によりパレット型/バケット型に大別されます。
自動コンベア(コンベヤ・コンベヤー)
「搬送」を自動化する機器になります。一方方向に連続的に荷物を運搬する装置一般をコンベアと呼んでいます。多くのコンベアが前後や途中に加工工程を組み込んでおり、運搬過程で物流加工を自動化して行います。例えば封函機(箱詰めされた段ボールを運送用に梱包します)や、計測器(箱のサイズを測ります)等が一般的です。コンベアの素材によりベルト式/チェーン式等様々な形式があります。
ソーター
「仕分け」作業を自動化するのがソーターです。多くは搬送工程の途中に組み込まれ、多数の分岐機能を備える事で、出荷時の店舗別仕分けや方面別仕分け作業の自動化を実現します。扱う荷物のサイズによりピース/ケースに大別され、それぞれ荷物に適した方式が取られる為、非常に多くの種類があります。
いずれも大量の荷物を自動的に扱う事が可能で、大規模施設になれば複数の設備を導入している拠点も多く、それぞれの設備が連携して物流センター業務を担っています。
3. 自動化手段:物流ロボット機器
物流向けロボットは近年盛んに開発され、多くのメーカーから様々な機器が発売されています。物流ロボットも広義では「マテハン機器」に分類されますが、ここでは従来からある固定設備ではなく知能化され人と協働して物流倉庫で活躍する機器を「物流ロボット」として紹介したいと思います。
従来からロボットはAGV(Automated Guided Vehicle)、AMR(Autonomous Mobile Robot)等搬送方式での区別が一般的でした。ただ、同じAGVでも搬送の方式や機能により担っている物流オペレーションが大きく異なるため、それぞれ分けて考える事が重要です。
GTP型AGV
GTP(Goods to Person)という考え方でピッキングを行うロボットが多くの倉庫で見られるようになってきました。棚を持ち上げガイドに沿って走行する事で、ピッキングステーションまでロボットが棚を搬送します。ピッキングを行う人が動く事なく作業が出来るため、歩行の削減による作業効率の改善が可能です。
ピッキングアシスト型AMR(Autonomous Mobile Robot)
GTP型同様、ピッキング時の作業効率改善に寄与するロボットです。GTP型と違い、従来のピッキングゾーンに商品を搬送するロボットが入り込み、商品を実際に取るところのみを人が手助けする事で、人の移動距離を削減、作業効率を改善します。人の作業と共存するため、ガイド無しで自律走行が可能な所が最大の特徴で、自動運転技術にも通じる高度な制御が技術的に可能になったことで近年様々なロボットが登場しています。
CTU(Container Transfer Unit)
所定の棚までガイドに沿って走り、コンテナを箱から取り出し、自動で搬送するロボットです。搬送に加え、商品(箱)を取り出す、というアクションが出来る事が最大の特徴です。搬送効率をあげるために複数の箱を取り、一気に搬送できるタイプも登場しており、近年注目を浴びています。棚ごと全部を搬送するGTP型にたいし、特定の箱のみ搬送する事でより効率化を目指したソリューション、とも言えます。
ソーティング型AGV
上記のロボットが主に「ピッキング」工程の自動化を協働するのに対し、仕分け工程を自動化するロボットになります。ガイドに沿って搬送した後、クロスベルトやチルトトレイで「仕分ける」というアクションが付いたロボットで、これによりソーターを代替するソリューションとして近年採用が進んでいます。
関連記事:AGVとは?ロボットの概要や導入する5つのメリットなどを徹底解説
4.マテハン機器/物流ロボットのメリット/デメリット
メリット
マテハン機器、物流ロボットのいずれも、物流オペレーションを自動化する事が出来るため、以下のようなメリットが共通しています。
・効率化、省人化、コスト削減
業務効率の改善と省人化は、そのままコストの削減にもつながります。とくに、労働力不足による人件費高騰の影響を受けやすい庫内業務においては、自動化設備の導入は有効な選択肢となります。省人化の効果は単に現在かかっている人件費を削減するだけなく、採用コストや教育コストといった人的リソースの管理コストの削減にもつながります。
・処理能力向上
時間当たりの出荷ピース数、といった倉庫の持つ処理能力は自動化によって引き上げる事が可能です。特に高品質なマテハン機器は高い能力を有しており、人力では到底不可能な高速の処理を実現します。当日配送等、物流業務へ求められる短リードタイムの要求は近年激しくなってきており、人力での対応が限界にある、という現場も多く見られます。
・品質向上、ミス防止
原則として機械はミスを犯しません。ヒューマンエラーが排除でき、安定した品質管理を行う事ができます。特に繁閑の大きな商材を扱う倉庫では、スポット人材の活用に頼って物流オペレーションを行っている所も多く、作業者の経験(ベテラン/初心者)による品質のバラツキを避ける事は難しく、自動化の際の大きなメリットになっています。
その他、冷凍冷蔵庫など人の働きにくい環境、危険な環境での作業などは自動化のメリットが大きくなります。
他方、自動化はメリットだけではなくデメリットも多くあります。マテハン機器と物流ロボット、それぞれでデメリットを解説したいと思います。
デメリット
・導入費用が高額
・固定設備のため、レイアウトが固定化。荷主の変化等、環境変化への柔軟な対応が困難
設備のトラブルにより全オペレーションが停止する等、機械に依存したオペレーションとなる
マテハン機器は高額な投資となるため、慎重な見極めが重要となります。また、慎重に検討した結果導入したとしても、作業内容(オペレーション)が変われば対応は出来ないため、活用しきれていない倉庫も多く見られます。
・物流ロボットの陳腐化
物流ロボットは技術革新の途上にあります。多くのロボットがスタートアップ企業により開発されており、競争が激化しています。いわば日進月歩の状況ですので、陳腐化のリスクはあると考えられます。
・機器の安定性や保証
数十年の歴史があるマテハン機器と比較すると、安全性や保障は劣るかもしれません。
5.オペレーションに最適な自動化を
ここまでご説明したとおり、昨今、物流業界では慢性的に人材の確保が難しくなっている上、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、庫内の柔軟な人材配置も困難になってきています。
一方で、マテハン機器の導入は高額な初期費用が必要になるケースも多く、一定以下の規模感の倉庫では費用対効果が合わない可能性もあります。
最新のロボットにもメリット/デメリットの双方があり、自社オペレーションに合うか、慎重に見極めた上で自動化していく事が求められます。
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