物流業界が抱える課題とは?解決するための施策とともに解説
EC・通販事業の普及により、物流業界の需要や市場規模が拡大しています。一方で、もともと課題であった人手不足がより深刻化し、業務を圧迫している点が問題視されています。 ほかにも物流業界にはさまざまな課題があり、改善策が見つからずに頭を抱えている事業者も多いのではないでしょうか。
この記事では、物流業界が抱える課題と解決するための施策について解説します。ぜひ最後までご覧ください。
1. 物流業界が抱える5つの大きな課題
まず、物流業界が抱える5つの課題について解説します。
- 深刻なドライバー不足
- 倉庫内で働く人員の不足
- 配送スピードや再配達への対応
- 働き方改革への対応
- エネルギー問題
それぞれの課題への理解を深めておきましょう。
(1) 深刻なドライバー不足
物流業界では、深刻なドライバー不足が問題となっています。ドライバーの平均年齢が高くなり、若い世代の人材がなかなか集まりません。その理由のひとつに、”トラックドライバーの仕事が過酷である”というイメージが強く根付いていることも挙げられるでしょう。
ECサイトが急激に普及し、インターネットショッピングの利用量は年々増加傾向です。それに伴いBtoCの小口配送が急増し、物流業界を圧迫しています。
国土交通省が2018年に発表した調査によると、トラックドライバー不足を訴える企業は全体の約70%という結果です。(参考:国土交通省/物流を取り巻く現状)
調査結果は年々増加傾向であるため、現状はさらに深刻化していることが予測されます。
(2) 倉庫内で働く人員の不足
人手不足はドライバーに限ったことではありません。少子高齢化に伴い、倉庫内で働く人員も不足している現状です。
インターネットショッピングの急激な需要増加に対し、出荷が追いつかない問題も生じています。ECサイトの普及によりラッピング等の付帯作業への対応も増え、いかに効率よく対応できるかが課題です。
ただでさえ倉庫内の作業は”肉体的にきつい”というイメージが強く、なかなか若い世代が集まりません。倉庫内作業のマイナスイメージを払拭できるような環境を整えることも課題となっています。
関連記事:物流倉庫での人手不足が深刻に!人手不足解消の有効な対策は?
(3) 配送スピードや再配達への対応
多種多様なEC・通販事業が展開されている中で、「翌日配送」などの配送スピードを売りにする企業も増加しています。顧客側としては便利で魅力的な取り組みですが、配送業者への負担は増える一方です。
さらに、荷物の量が増えることで再配達の量も増え、再配達問題への取り組みも課題となっています。労働環境の悪化が加速し、ドライバー不足の深刻化に拍車をかけているのです。
(参考:国土交通省/宅配便の再配達削減に向けて)
(4) 働き方改革への対応
大企業は2019年4月、中小企業は2020年4月から「働き方革命関連法」が施行されました。働き方革命関連法では、「時間外労働の上限制限」「年次有給休暇の時季指定」「同一労働同一賃金」などが定められています。(参考:厚生労働省/働き方革命特設サイト)
物流業界が関わる自動車運転業務に関しては5年間の猶予があり、2024年4月以降から適用される方針です。これによりトラックドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限されます。
万が一上限規制に違反した場合には、6か⽉以下の懲役または30万円以下の罰⾦が罰則として科される可能性があります。早急にトラックドライバーの人手不足を解消しなければなりません。
物流業界の低賃金・長時間労働が問題視されるなかで、自動車運転業務に生じる諸問題は「2024年問題」とも呼ばれています。いくら適用までに5年間の猶予があったとしても、簡単に解決できる問題ではありません。
(5) エネルギー問題
燃料費は高騰するリスクを常に抱えています。いくら燃料費が上がっても、運送業者はそのたびに運賃を値上げできるわけではありません。
これには、運送業者は立場的に弱く、値上げ交渉が難しいという状況も一つの理由として挙げられます。個口多頻度化に伴いトラックの積載効率が年々低下している中で、いかに効率よく配送できるかが課題です。(参考:国土交通省/物流を取り巻く現状)
また、再配達には料金が発生しません。EC・通販事業によるBtoCの増加で再配達の数も増え、さらに燃料費を圧迫している現状です。
2. 国土交通省による物流課題への取り組み
国土交通省では、物流業界の人手不足やニーズの高度化・多様化による多頻度小口輸送の進展等に対応するために、「物流総合効率化法(正式名称:流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律)」を2016年10月に施行しました。
流通業務の効率化を図る事業に対する計画の認定や支援措置等を定めた法律であり、支援を受けるためには定められた条件に適合し、認可を受ける必要があります。(参考:国土交通省/物流総合効率化法について)
こちらでは、物流総合効率化法において支援制度の対象となる効率化の方法を3つ紹介します。
(1) 輸送網の集約
各社バラバラに行っていた輸送網をひとつにまとめ、集約化することが目的です。集約することで必要なトラックの台数を減らし、効率よく配送できるようにします。
今までは工場で製造された製品は一度物流倉庫で保管され、その後店舗等に配送されていました。トラックの稼働台数が増え、積載効率の低下が問題となっていたのです。
輸送網の中心に「輸送連携型倉庫(特定流通業務施設)」を設立し、そこに荷物を集約してから納品先へと配送するのが主な方法となります。
(2) 輸配送の共同化
輸配送の共同化とは、2社以上が連携して共通の保管庫や輸送手段を使うことです。積載率の向上だけでなく、CO2削減にも寄与します。
各社で運送業者を手配すると、荷物の量が少なくてもトラックを稼働させる必要があります。共同倉庫に複数の業者が商品を保管することで、同じ配送先に1台のトラックで輸送することが可能です。
(3) モーダルシフト
モーダルシフトとは、トラックだけで輸送していたものを、環境負荷の小さい鉄道や船舶などに切り替えることをいいます。トラックよりも多くの荷物を運搬でき、ドライバー不足やCO2削減など、物流業界が抱える課題に大きく貢献できる仕組みです。
令和3年度までの認定事例を見ると、ドライバーの運転時間において70%以上の省力化を実現している企業が多くあります。(参考:国土交通省/令和3年度物流総合効率化法の認定状況)
物流業界の課題を解決する有効な手段として、今後積極的に取り組むべき施策といえるでしょう。
3. 物流業界の課題を解決する5つの施策
こちらでは、物流業界の課題を解決するために有効な5つの施策を紹介します。
- 物流システムの構築
- 物流アウトソーシングの利用
- 物流業務の自動化
- 物流拠点の見直し
- ドローンやAIの活用
自社の現状と照らし合わせ、改善できる部分がないか確認してみましょう。
(1) 物流システムの構築
今まで手作業で管理していた倉庫であれば、倉庫管理システム(WMS)や配送管理システム(TMS)で物流システムを構築することで、業務の効率化につながります。
物流システムを構築すると、正確な在庫管理が行えるようになります。蓄積されたデータを分析し、より有効な施策を考えることも可能です。配車やルートの最適化、輸配送中の荷物のリアルタイム追跡なども可能にします。
物流システムによって一元管理することでさまざまな無駄を省き、物流コストの削減にもつながります。
(2) 物流アウトソーシングの利用
物流アウトソーシングを利用することで、繁忙期や閑散期に合わせて必要な人員を確保できます。販売機会の損失や人件費に関わる問題の解消が可能です。
例えばEC・通販事業はフルフィルメントタイプの倉庫に委託すれば、お客様サービスセンターや流通加工など、今まで別々に行っていた業務を一元管理できます。情報や商品が行き来する時間を省き、トレンドに合わせた商品展開が実現できるのです。
人員調整で悩むことが少なくなれば、その分ほかの作業に専念できます。事業の拡大や新製品の開発など、更なる発展にもつなげられるでしょう。
(3) 物流業務の自動化
物流業界の人手不足を解消する施策として、物流業務の自動化も有効な施策の一つです。仕分けやピッキング、運搬など、さまざまな業務をサポートするロボットの開発が進んでいます。
人手不足で悩む部分を自動化できれば、物流業務の省人化・省力化を実現できるだけでなく、人件費の削減も可能です。ヒューマンエラーの軽減にもつながります。
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(4) 物流拠点の見直し
配送にかかる時間やコストを削減する施策として、物流拠点を見直すことも大切です。その際、出荷が多いエリアを拠点とするか、自社商品の仕入先を拠点とするかなど、さまざまなケースを想定して比較や分析を行いましょう。
場合によっては物流拠点を分散させる目的として、一部の商品をアウトソーシングする方法もあります。配送面でネックになっている部分を洗い出してみましょう。
(5) ドローンやAIの活用
AIシステムを活用することで配車を最適化する取り組みが多くの運送業者で進められています。配送による無駄を省き、走行距離およびCO2排出量の削減を実現する取り組みです。
また、海外でもEC業界の拡大は目覚ましく、アメリカではすでにAIを搭載したドローン宅配の実用化が始まっています。日本では法律や安全性などの問題からすぐに実現することが難しく、課題が山積みの状況です。
今後さらにAI技術が進化することが期待されています。
4. まとめ
物流業界の需要が高まる一方で、物流全体の人手不足や再配達への対応、働き方革命適用に向けた取り組みなど、多くの課題を抱えています。今後もEC・通販事業の拡大により、さらに状態は深刻化していくことでしょう。
物流業界の課題を解決するための施策はいくつかありますが、どれも簡単にできることではありません。まずは自社の抱えている課題をしっかりと把握し、すぐに対応しなければならない問題点を洗い出すところから始めましょう。
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